主張
「防災の日」
「人災」にしない備えを怠らず
きょうは「防災の日」です。10万人以上が犠牲になった1923年の関東大震災にちなみ、災害の教訓に学び、日頃の備えを点検・強化する取り組みが各地で行われます。8月末に相次ぎ襲来した台風は、鹿児島県の離島などで住宅倒壊など爪痕を残しました。近年、火山活動が活発な地域では住民生活や産業に影を落としています。「災害大国」日本にとって災害への警戒・避難体制を整え、被災者支援などを拡充することは重要な課題です。あらゆる事態を想定し自然災害を「人災」として広げない政治の役割が求められます。
火山防災の拡充を急ぎ
各地で相次ぐ火山活動の活発化は、日本が世界有数の火山国である現実を突きつけています。
5月末に爆発的な火山噴火が起きた鹿児島県の口永良部(くちのえらぶ)島では島民137人全員が島を離れ、近くの屋久島などで避難生活を強いられています。3カ月たったいまも居住地域に重大な被害を及ぼすことを意味する「噴火警戒レベル5」が続くなか、住民への支援を強めることが必要となっています。
鹿児島県の桜島も火山性地震が増え、住民に避難準備を求める「噴火警戒レベル4」にして警戒が続いています。神奈川県箱根町の大涌谷(おおわくだに)では火山性地震が断続的に続き、5月初め、登山禁止・入山規制の「噴火警戒レベル3」に引き上げられました。地域経済を支える観光に打撃を与えており、地元へのきめ細かい支援策を拡充することが急務となっています。
昨年9月、火山災害としては戦後最悪の63人もの犠牲を出した御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県境)の噴火は、火山災害のすさまじさを改めて浮き彫りにしました。同時に、活火山が110もあるのに火山研究者が少ないなど日本の火山の観測・監視体制の国際的な立ち遅れが大きな問題となりました。
御嶽山噴火を受け、政府は観測・監視体制の拡充へ踏み出しましたが、一つ一つの火山の特徴をつかみ、適切な噴火予測や警報を発令できる十分な体制にはなっていません。長期的な研究が必要な火山の研究者の育成、大学など研究機関の財政支援の強化など抜本的な対策がいよいよ不可欠です。
日本には、世界の陸地面積の0・25%しかないのに世界の活火山の7%が集まっています。東日本大震災以降、日本の火山は「活動期」に入ったと指摘する専門家もいます。今年の国連世界防災白書は、日本で潜在的に起こる噴火による火山灰被害などで年間平均約112億ドル(約1兆3600億円)の経済損失が出るという推計値を公表しました。地震・津波への備えとともに火山防災を「災害に強い国」をつくる柱の一つにするべきです。
周辺に火山が集中する九州電力川内(せんだい)原発を再稼働させたことは、危険な暴走です。国民の安全を保障するため、再稼働中止・「原発ゼロ」に踏み出すことが必要です。
被災者支援を強めてこそ
発生から4年半となる東日本大震災の被災地復興と被災者支援へ政治が力を緩めることがあってはなりません。安倍晋三政権は「集中復興期間」を延長せず、求められる支援を縮小・廃止しようとしていますが、被災者に苦難を強いることは許されません。支援が必要な被災者に心を寄せ続ける施策を行うことは、災害大国日本の政治の最低限の責任のはずです。