菅義偉官房長官は31日の記者会見で、戦争法案廃案目指して前日に取り組まれた全国大行動について、「一部の野党やマスコミから戦争法案だとか徴兵制の復活などの宣伝もされ、大きな誤解が生じていることは極めて残念だ」などと表明しました。

 いったいぜんたい、「誤解」しているのはどちらか。

 菅長官は、戦争法案はあくまで、「国民の生命と平和な暮らしを守る」ためのものだと強弁したいようです。しかし法案は、核兵器の運搬まで含む、自衛隊による歯止めのない米軍への兵たん支援が可能になるということ、集団的自衛権行使により、米国が世界中で行う先制攻撃に参加できるようになることなど、どこからどう見ても戦争法案と呼ぶしかない代物です。

 だからこそ、英BBC放送や中東のアルジャジーラなど、世界の代表的メディアも「軍事法案」という呼び名で、その危険な中身やこれに反対する世論の広がりを伝えているのです。菅長官はこれらも「誤解」のもとを振りまいているというのでしょうか。

 いま、日本列島の津々浦々で、若者、小さな子どもを持つお母さん、中年、高齢者などの自主的な戦争法案反対運動が空前の規模で広がっています。また圧倒的多数の憲法学者や弁護士、大学人に加えて、内閣法制局の元長官や最高裁判所の元判事らも違憲の法案は廃案しかないと声を上げています。

 菅長官の言い分が正しいとすれば、法律の専門家も含む国民の多数が、「一部野党やマスコミ」にだまされていることになります。これほど民意を「誤解」し、国民をばかにした話はありません。今回の発言が政府・与党に対する怒りの火にさらなる油を注ぐことは必至です。(小泉大介)