主張

川内の次は高浜?

再稼働突き進むだけが対策か

 九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が国内で唯一運転を再開したばかりだというのに、2号機でも再稼働の準備が進み、関西電力高浜原発3号機(福井県)でも再稼働にむけた原子力規制委員会による使用前検査が始まりました。高浜原発は福井地裁が運転を差し止める仮処分決定を出しており、いますぐの再稼働は不可能です。にもかかわらず原発の再稼働を急ぐ安倍晋三政権や電力会社の姿勢は異常です。重大事故を起こした東京電力福島第1原発(福島県)の現状から見ても、電力需給や廃棄物の対策から見ても、再稼働に突き進むべきではありません。

国民・住民の不安逆なで

 安倍政権は、原子力規制委が東電福島原発事故後、手直しした規制基準に「合格」した原発は条件をつけず再稼働させる方針をとっています。規制委はすでに川内原発1、2号機、高浜原発3、4号機、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について「合格」を決めました。稼働に向け電力会社が規制委に審査を申請している原発は、全国で20基を数えます。

 約4年半前の東日本大震災の際、巨大な地震と津波で全電源が失われ、原子炉と建屋が大きな被害を受けて放射性物質が外部に漏れ出した福島原発は、いまだに原子炉内の破損した核燃料を取り出すめどさえ立たず、原発周辺だけでなく広範な地域で住民が住めない状態が続いています。県内・県外への避難者だけでも10万人にのぼっているのに、事故は忘れたかのように原発を再稼働させるのは、被災した原発周辺の住民と原発に不安をつのらせている全国民の気持ちを逆なでするものです。

 福島原発事故のあと稼働していた原発も次々停止し、一昨年9月以降は全国の50基近い原発が1基も稼働しない「原発ゼロ」が続いてきたのも、原発に対する国民の不安が一気に強まったからです。川内原発の再稼働後も、再稼働「反対」が共同通信の調査で55・3%、読売新聞の調査で58%となっているなど、国民の意思は明白です。国民の声に背を向けた再稼働強行はただちにやめるべきです。

 だいたい全国の原発が1基も動いていなかったこの2年近く、夏も冬も電力は足りていたのに、原発の再稼働を急ぐ理由はありません。原発を再稼働させなければ電力不足が起き経済が混乱するよう宣伝した安倍政権と電力会社の主張は、完全に破綻しています。

 原発は運転を開始すれば、高いレベルの放射性物質を含む使用済みの核燃料がたまり始めます。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する技術は確立しておらず、高いレベルの放射性廃棄物が含まれる「核のゴミ」を処理する場所も方法も決まっていません。「トイレのないマンション」といわれる廃棄物対策の行き詰まりひとつとっても、原発再稼働が許されないのは明らかです。

ただちに「原発ゼロ」を

 安倍政権は、2030年度には日本の電力の20%以上を原発で賄う目標を掲げ、電力会社は停止中の原発の再稼働に加え、40年間と決まっている運転期限の延長や原発の新増設を目指しています。

 いったん事故を起こせば国民の生存さえ脅かす原発の運転は強行すべきではありません。再稼働ではなく、原発は停止したまま「原発ゼロ」を実現すべきです。