敦賀原発 活断層未公表資料漏らす
規制庁幹部、原電側に
規制委が更迭
原子力規制委員会は1日、同委の事務局・原子力規制庁幹部の名雪(なゆき)哲夫審議官(54)が、日本原子力発電敦賀原発(福井県敦賀市)の活断層の未公表資料を日本原電側に渡していたことを明らかにしました。同委は内規に違反するとして同審議官を更迭し、文部科学省に出向させると発表しました。
しかし、名雪審議官がなぜ日本原電に未公表資料を渡したのかなどについては「本人の軽率な行為」と繰り返すだけで確かめておらず、真相にふたをする姿勢です。また、未公表資料を受け取った日本原電に対しても、何も指導しないとしました。
臨時に会見した原子力規制庁の森本英香次長によると、名雪審議官は1月22日、同庁内の執務室で、日本原電の市村泰規常務ら3人と30分間面談しました。同庁側からは同審議官1人。この際、28日に公開で検討されるはずだった日本原電敦賀原発の「敷地内破砕帯についての評価について(案)」を渡したといいます。渡した案には、「評価のポイント」との書き込みや、文に下線などが引いてあります。
同庁で審議官は3人。名雪審議官は1983年に旧科学技術庁に入庁、文科省や旧原子力安全委員会など原子力畑が長く、同庁で原発の地震や津波対策を担当していました。
「影響力がある」幹部で、文案について書き直しを指示する権限があるといいます。
問題が発覚したのは23日「本人が申し出た」からといいます。
同審議官と日本原電の面談は「儀礼上のあいさつ」という理由で約束をとったとしていますが、「儀礼上のあいさつ」で会ったのは今回が初めてではないといいます。
会見で森本次長は、同審議官がどのような理由で日本原電に渡したのかなどについて問われ、「わかりません」「確認していません」と繰り返し、「本人の処分で(事実確認は)終結した」と述べました。また、資料を受け取った日本原電に対しては、調査もしていないのに指導などするつもりがないとしました。
規制側と電力会社が癒着
旧保安院の体質 今も
原子力規制庁の名雪哲夫審議官が、規制対象である日本原子力発電に敦賀原発破砕帯調査に関する内部資料を渡していたことが明らかになりました。同庁の審議官は、長官、次長、緊急事態対策監に次ぐ立場の幹部です。その幹部が、原子力規制委員会から調査を受けていて調査結果に反発している日本原電に、資料、会議で配布する1週間も前に手渡していたというのです。規制側と電力会社の癒着体質の根深さを示しています。(間宮利夫)
規制庁は、東京電力福島第1原発事故の後、「安全神話」にどっぷり漬かって地震と津波に対する備えを取らせていなかったことや、規制の立場を放棄して電力会社と癒着し原発推進の先頭に立ってきたことが次々明るみに出て、国民から見放された旧原子力安全委員会と、旧原子力安全・保安院に代わって発足した原子力規制委員会の事務局です。
規制委員会は、中立公正な立場で独立して職権を行使するとうたっています。名雪審議官は文部科学省の出身で原子力分野の担当でした。規制庁は1日の会見で「(これまで)儀礼上のあいさつ」として電力会社と接触があったことを認めました。
専門家チームによって行われている規制委による敦賀原発破砕帯調査は5人の専門家全員が「活断層の可能性が高い」と指摘し、1月28日の会合で報告書案をまとめました。その際、島崎邦彦規制委員長代理は「(ほかの専門家の)意見を聴く」ことを突然明らかにし、会合に出席した専門家からは「屋上屋を重ねる」との声があがりました。
規制委が進めている原発の新安全基準づくりでも、当初の案からの“後退”が目立っています。今回、改めて明らかになった規制側と電力会社の癒着が影響しているのではないかと懸念せざるを得ません。
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