今年の核不拡散条約(NPT)再検討会議が、最終文書を採択できずに終わったことは残念でした。しかし会議の内容は、大多数の国が核兵器国を確実に追い詰め、それだけに核兵器国の抵抗を浮き彫りにしました。
第1委員会の素案(5月8日付)は、核兵器禁止条約などによる期限を切った核兵器廃絶のための法的枠組みに初めて言及しました。核保有5カ国は「漸進的なステップ・バイ・ステップのアプローチこそ、グローバルな戦略的安全と安定を維持しながら核軍縮を前進させる唯一の実際的なオプションである」との声明を発表しました。
この「ステップ・バイ・ステップ」論こそ、打ち破られつつある「核抑止力」論にしがみつく核保有国が核兵器保有の最後の「論拠」として固執しているものです。
「ステップ・バイ・ステップ」論は米国の主張であり、その背後にあるのは、「米、同盟国などの死活的利益を防衛する極限状況では、核の使用を検討」し、そのために核戦力の近代化を今後長期にわたって進めるとする米国の核戦略です。
他方ロシアは、昨年12月に軍事ドクトリンを改訂。北大西洋条約機構(NATO)に対抗して核戦力を強化する方針を打ち出し、自国への核、非核兵器の攻撃に対して、核攻撃の権利を主張しています。
重大なことは、米国の立場に他の核保有国も同調し、声明の形で、核兵器廃絶に条約などで法的拘束力をもたせる動きを強くけん制したことです。遺憾なことに、声明を発した核保有国の中に、核兵器廃絶のためのイニシアチブをとる国はありませんでした。
核兵器廃絶条約締結を求める国々に対して、米国代表は、「効果的措置等というのは法的に拘束力のあるものとは限らない」と述べ、段階的アプローチを擁護するものの根拠は示せず、「最終局面では」条約による禁止と廃絶が必要であることを認めました。
フェルキ議長が配布した最終文書案にある「法的規定」の文言は、こうした議論の反映です。前会議の「枠組み」から「法的規定」という、より明確な表現に内容的に前進したことは、今回のNPT再検討会議の注目すべき点でした。
核保有国を確実に追い詰めてきたこれまでの世界大会の方針をさらに大きく太く貫いていきましょう。
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