19年ラグビーW杯会場は断念
安倍晋三首相は17日、2020年東京五輪・パラリンピックでメーン会場となる新国立競技場について、「建設計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す」と表明しました。総工費が2520億円にも膨れ上がったずさんな計画の抜本的見直しを求める国民、スポーツ界をはじめ幅広い世論とたたかいに押されたものです。日本共産党は国会論戦で追及し、17日には遠藤利明五輪担当相に申し入れるなど抜本的見直しを求めてきました。首相は官邸で記者団に「国民の皆さん、アスリートたちからも大きな批判があった。このままではみんなで祝福できる大会にすることは困難だと判断した」とのべました。
新競技場を使用する予定の19年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会には間に合わなくなる一方で、東京五輪・パラリンピック開催までに「間違いなく完成できると確信できたので決断した」とのべました。しかし見直し案については、「コストを抑制し現実的なベストな計画をつくる」とのべるにとどまりました。
これに先立ち首相は日本ラグビー協会名誉会長も務める森喜朗五輪組織委員会会長と会談。続いて加わった下村博文文部科学相、遠藤担当相に新たな計画策定を指示しました。下村氏は、新競技場の完成は20年春との見通しを示しました。
新競技場の総工費は12年の当初計画は1300億円でしたが、2本の巨大なアーチ構造を採用したことから14年の基本設計では1625億円、今月決定した実施設計では開閉式屋根などを後回しにしても当初の2倍となる2520億円にも膨れ上がっていました。
ところが安倍内閣は「見直すとラグビーW杯や五輪に間に合わない」として計画決定を強行。業者と契約を結ぶなどごり押しする姿勢を強め、「ムダ遣い」「環境破壊」「民意無視」との批判が国民はじめ建築家、スポーツ界など各界各層から高まっていました。
「国民連携で監視していく」
日本共産党スポーツ委責任者 宮本岳志衆院議員
安倍首相が新国立競技場の「計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直すと決断した」ことを表明しました。これまで、著名な建築家が新国立競技場の見直し案を示し、各種世論調査でも国民の8割以上が計画を見直すべきとし、アスリートからも批判の声が上がったことが、政府を動かしたといえます。
同時に日本共産党国会議員団は、衆参の委員会などで新国立競技場について質問を行い、見直し案を提起し、首相に申し入れもしてきました。
開催都市の負担軽減をめざす国際オリンピック委員会の「五輪アジェンダ2020」の基本精神を尊重し、国民合意のもとに簡素でむだのない新国立競技場の建設がされるように、国民と連携して監視していきたいと思います。
解説
新国立白紙に 問われる専制政治
安倍首相が、東京五輪・パラリンピック主会場となる新国立競技場の建設計画を白紙撤回する方針を表明したのは、安倍政権の暴走を許さないと声をあげた幅広い国民、スポーツ界はじめ圧倒的多数の世論とたたかいが動かしたものです。安倍政権はこれまで総工費が当初計画の2倍、2520億円にも膨れ上がっているにもかかわらず、見直しを求める民意を無視し、「五輪に間に合わない」「国際公約だ」などといって最終計画を強引に決定。安倍首相は10日も国会で「新しいデザインを決め、基本設計をつくっていくと間に合わない」と答弁、ごり押しする姿勢を見せていました。
それが一転して白紙撤回に追い込まれたのは、戦争法案への厳しい批判と相まって、支持率と不支持率が逆転。戦争法案の強行採決に続いて、建設計画まで強行すれば「政権批判に拍車をかける」(自民党幹部)との危機感を募らせたからです。
問題は中身です。首相は「コストを抑制し現実的にベストな計画をつくる」とのべるにとどまっています。
建設費膨張の原因である2本の巨大なアーチ構造を含めて抜本的見直しをしてこそ、総工費も削減でき五輪開催にも間に合うことは専門家からも指摘されている通りです。
安倍首相は16日、見直しについて「国民の皆さまの声に耳を傾ける」とのべました。そうであれば、憲法違反の戦争法案についても大多数の民意に従い、なぜ廃案にしないのか問われることは避けられません。民意無視の独裁・専制政治を許さない国民世論とたたかいがいっそう重要になっています。
(深山直人)
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