大義も国民の声も存在しない―自民、公明の与党が22日に強行した95日間の国会の大幅会期延長は、世論の大半が反対する戦争法案を何が何でも通そうとする暴挙です。

国民不在の極み

 安倍晋三首相は法案の国会提出を前に米連邦議会で「この夏までに成就させる」(4月29日)と演説し、法案成立を宣言しました。大幅延長は、この“対米公約”を実行するためのものであり、この意味でも国民不在は極まっています。

 衆院安保法制特別委員会における質疑は、中谷元・防衛相や岸田文雄外相の答弁がたびたび迷走し、これまで50回近く審議が中断するなどの異常ぶりです。

 6月4日の衆院憲法審査会では、参考人として出席した憲法学者3氏全員が、集団的自衛権を可能にする法案は「(従来の憲法解釈を)踏み越えた」などとして「違憲」と断言しました。22日の安保法制特での参考人質疑でも、宮崎礼壹(れいいち)元内閣法制局長官は、集団的自衛権行使容認について「憲法9条に違反し、速やかに撤回すべきだ」と明確に主張しました、歴代政府の見解を“ふまえている”と強弁する安倍政権ですが、その政府見解を担ってきた当事者から「憲法違反」のらく印を押された意味は重大です。

 こうした法案反対の“包囲網”に対し安倍首相ら政権幹部の主張は支離滅裂になっています。

 中谷防衛相は「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいか」と、憲法を一法案にあわせるという立憲主義を無視した答弁(5日の安保法制特)を行い、後日、発言の撤回に追い込まれました。安倍首相は「従来の(憲法)解釈に固執するのは政治家としての責任の放棄だ」(18日の衆院予算委)と言い放ち、解釈改憲を無理やり正当化しました。

撤回・廃案が筋

 9月末までの100日近い会期延長日数は、ここまでの議論を踏まえ、残された国会審議が長期間必要なこと、衆院通過から参院で60日間たっても採決されなければ衆院で「再議決」できるという「60日間」ルールを念頭においたものです。

 戦争法案の土台そのものが総崩れし、荒業(あらわざ)を使ってしか通せない政権の自信のなさが表れています。政府の説明が破綻するなか、過去最長の延長を強行してしか採決の見通しがたてられない法案など、そもそも廃案にするのが筋です。

 最新の世論調査(共同通信、20、21両日実施)では、同法案をめぐり「違憲」が56・7%、「反対」が58・7%、「今国会の成立反対」が63・1%、「十分に説明していない」が84%にも上り、前回より増加しています。政府・与党はこうした世論に従い、戦争法案を撤回・廃案にするべきです。(遠藤誠二)