主張

中学校教科書採択

戦争する国への教育にノーを

 中学校で使う教科書を選ぶ教科書採択が、この夏に行われます。侵略戦争を美化する歴史教科書と改憲が必要と思わせる公民教科書を選ばせようという動きが、安倍晋三政権の戦争法案推進の動きと一体となって活発化しています。「戦争をする国」を支える教育を担う教科書を、子どもたちの手に渡さないよう各地で取り組むことが重要になっています。

戦争法案と一体の策動

 公立小中学校の教科書は原則4年ごとに決められます。教員などによる調査員の報告をふまえ、保護者や住民の意見も参考に、教育委員会が文部科学省の検定に合格した教科書から選ぶ仕組みです。

 侵略戦争美化の育鵬社と自由社の歴史教科書は日本の侵略戦争を「自存自衛」「アジア解放」のためと描き、「日本の戦争は正しかった」という主張が貫かれています。

 日本の戦争が誤った侵略だったという判定は、戦後の国際秩序の原点です。日本政府は1982年の宮沢喜一官房長官談話で過去の戦争への反省が「学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきもの」と表明し、検定基準を改定しました。宮沢談話の立場は今も変わらないことが国会で確認されています。両社の教科書は日本政府の公式の立場にも反し、世界で通用しない認識を子どもたちに植えつけるものです。

 公民教科書でも戦争への反省がみられません。他社の教科書は憲法の平和主義の説明で、戦争への反省から戦争の放棄などが定められことを明記しています。育鵬社の教科書は、戦争放棄などを連合国軍に押し付けられたもので「世界的には異例」と否定的に描き、「平和主義」の項目の大半を自衛隊の説明に割く異常なものです。

 重大なことは、こうした教科書を採択させようという動きが、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦争法案を押し通そうとする安倍政権の動きと、ぴったり重なり合っていることです。

 「戦争する国」には進んで戦争に行く国民が必要です。かつては軍国主義教育が国民を戦争に駆り立てました。「日本は正しい戦争をした」と教えることで、再び同じ過ちを繰り返してはなりません。

 育鵬社版教科書の採択を推進する日本教育再生機構の集会には首相補佐官の衛藤晟一参院議員が出席し、支援の発言をしています。再生機構と改憲団体の日本会議の支持する首長や地方議員が、各地で教育委員に育鵬社版の採択を働きかけています。「戦争をする国づくり」を進める勢力と侵略美化の教科書の採択を進める勢力とが一体であることを示しています。

 文科省は教科書採択では教員の意見を尊重し保護者・住民の意見をきちんとふまえることが必要だとするとともに、改定地方教育行政法の下でも首長には採択の権限はないと明言しています。自民党などの介入を許さず、それぞれの地域の子どもに最適な教科書を選ぶことを求める運動をいっそう広げることが大切になっています。

取り組み各地で広げ

 育鵬社や自由社の教科書を採択させないよう、学習会や教育委員会への要請、教科書展示会での意見提出、宣伝・署名活動などの取り組みが各地で広がっています。

 侵略戦争美化の教科書採択を許すなの声を、戦争法案阻止のたたかいと結んで広げましょう。