主張
違憲への政府弁明
「黒を白」と言い張る論理破綻
衆院憲法審査会で憲法学者がそろって安全保障関連法案(戦争法案)を「憲法違反」と指摘したことに対し、安倍晋三政権が弁明に躍起です。1959年の砂川事件最高裁判決や「集団的自衛権と憲法との関係」についての72年の政府見解を持ち出して法案の「合憲性」を主張していますが、これらの判決や見解は逆に集団的自衛権行使の違憲性を示したものです。安倍政権の弁明は黒を白と言い張る類いの議論であり、そのでたらめぶりを浮き彫りにするだけです。
公明党座長代理も否定
衆院憲法審査会(4日)では、自民党推薦の長谷部恭男早稲田大学教授を含め参考人の憲法学者3人全員が、今回の法案を「違憲」と断じました。これに対し安倍首相は記者会見(8日)で、砂川事件の最高裁判決が「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置」を認めていることを指摘し、この「自衛の措置」に今回の法案で認めた集団的自衛権の行使も含まれるかのように述べました。
しかし、同判決から集団的自衛権の行使容認を導こうとする議論は、すでに長谷部氏が「私が存じ上げている学者の方でそういう議論をしている人はいない」と批判し、「(判決を)素直に見れば、個別的自衛権の話をしている」「集団的自衛権(の行使)が憲法9条の下で否定されているというのは、実は砂川事件(最高裁判決)からも出てくる」と語っています(2014年3月28日、日本記者クラブ)。
しかも、今回の法案に関する与党協議会の座長代理を務めた公明党の北側一雄副代表も「この判決は『自衛隊や米軍駐留が憲法違反ではないか』が問われた時代の判決で、集団的自衛権の行使を根拠づける内容の判決ではありません」と述べています(公明新聞14年4月26日付電子版)。
憲法学者の「違憲」批判に対し自民党は「最高裁だけが最終的に憲法解釈ができる」と打ち消しに必死で、首相も砂川事件の最高裁判決を引いたのでしょうが、破綻済みの主張にすぎません。
安倍政権が集団的自衛権の行使容認について72年の政府見解の「基本的な論理を維持」しているとした文書(9日)も、こじつけ以外の何物でもありません。
同文書が持ち出している72年の政府見解の論理とは、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置」をとることができるのは「あくまで外国の武力攻撃」という「わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」というものであり、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」というのが結論です。憲法審査会で長谷部氏が集団的自衛権の行使容認について「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明が付かない」と指摘したのは当然です。
法的安定性を揺るがす
文書が集団的自衛権の行使を認める唯一の理由として挙げるのは「安全保障環境」の変化です。他国への武力攻撃が日本の存立を脅かすこともあると言いますが、それがどんな事態かの説明は全くなく、政府の判断任せです。こうしたやり方こそ「法的な安定性を大きく揺るがすもの」(長谷部氏)に他なりません。従来の政府見解を百八十度転換させた違憲の法案は即刻廃案にするしかありません。
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