戦地派兵
志位 自衛隊が攻撃されたらどうするのか
首相 「武器の使用になる」
自衛隊が攻撃される可能性が100%ないとはいえない、攻撃を受ければ武器を使用する――。安倍晋三首相は志位氏の追及に対し、海外の戦闘現場で自衛隊が攻撃を受け、武器を使用して反撃する可能性まで認めました。志位氏は「たとえ『後方支援』が目的でも、『戦闘地域』としてきた場所まで行って活動すれば、結果として戦闘することになる」と強調しました。戦争法案の中で戦争中の米軍等への「後方支援」を定めているのが、重要影響事態法と国際平和支援法の2法案です。
志位氏は、2法案に共通の最大の問題として、政府が従来「戦闘地域」としてきた場所まで行って自衛隊が軍事支援する点にあることを強調しました。(パネル1)
アフガニスタン戦争(2001年~)とイラク戦争(03年~)時の派兵特措法では、いずれも自衛隊の活動場所を「非戦闘地域」に限定しています。「非戦闘地域」とは、(1)現に戦闘行為が行われていない(2)活動期間を通じて戦闘行為が行われない―の2条件を満たす地域とされていました。
志位氏は、今回の2法案からは第2条件の規定が削られ、「現に戦闘行為が行われている現場」でなければ自衛隊が活動できることを確認。さらに「捜索救助活動」では第1条件の適用すら一部除外されていることをあげ、「きわめて重大な変更だ」と指摘しました。
安倍首相は「いま志位委員が説明したとおりだ」と変更点を認めました。
志位氏は、第2条件で除外してきた「戦闘行為が行われる可能性がある場所まで自衛隊が行くということは、相手から攻撃される可能性があるということだ。それを認めるか」と迫りました。
中谷元・防衛相は当初、「自衛隊が現実に活動を行う期間、戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定する」と答弁しました。
志位氏が「そんなことは法案に一言も書いていない。自衛隊が攻撃される可能性を否定するのか」とただすと、首相は「(攻撃される可能性が)絶対にないわけではない」と認めました。
志位氏はさらに論を進め、「自衛隊が攻撃されたらどうするのか。必要な場合には武器を使用することになる」と追及。安倍首相は「自己保存型の武器の使用になる」と述べ、武器を使用しての反撃についても認めました。
志位氏は「自衛隊が武器を使用すれば、相手はさらに攻撃し、撃ち合いが始まる。まさに戦闘することになるではないか」と指摘しました。
サマワの現実
志位 必ず戦死者が出る
首相、リスク頑として口にせず
一口に「武器の使用」といっても、実際に自衛隊がイラク・サマワに携行した武器はどんなものか。志位氏が示したのは、戦車を破壊できる110ミリ個人携帯対戦車弾や84ミリ無反動砲、12・7ミリ重機関銃といった重武装の実態です(パネル2)。「『人道復興支援』でもこれだけの武器だ。『後方支援』では、さらに強力な武器を持っていくことになる。こうした武器を使い反撃する。これが戦闘でなくて何なのか」と迫りました。これに対して首相は「武器の使用については自己保存型で正当防衛、緊急避難に限られる」などと答弁しました。そこで志位氏は、25日に外務省が提出した「国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義はない」と明記した文書を示し、「国際法上『武力の行使』とは別の『武器の使用』という概念や定義はない」と指摘。「自己保存のための武器の使用だから、戦闘ではないという理屈は国際社会では通用しない。憲法9条に違反する武力の行使そのものだ」と厳しく批判しました。
イラクでは「非戦闘地域」への派兵が建前でしたが、そこで実際に何が起こったのか。
陸上自衛隊は重武装で展開し宿営地を要塞(ようさい)化してなお、ロケット弾などによる攻撃を14回23発も受けました。航空自衛隊の輸送機はミサイルに狙われ、警告システムが作動、機体を急旋回、急上昇、急降下させる命がけの回避行動を必要としたのです。志位氏は「10個近く棺(ひつぎ)を準備」したという当時の陸自統合幕僚長の回顧も交え、「『非戦闘地域』が建前であっても、攻撃を受け、戦闘に至る一歩手前だった」と指摘しました。
そのうえで、こうした現実を無視して「戦闘地域」での活動を可能にし、弾薬提供や武器・弾薬輸送もできるようにすれば真っ先に攻撃対象になると強調。「自衛隊が現実に攻撃され、『殺し、殺される』危険が決定的に高まるのは明らかだ」と追及しました。
さらに、イラク戦争当時に自衛隊派兵の実務の中心を担った柳沢協二・元内閣官房副長官補が「確実にリスクが高まる」「必ず戦死者が出る」(「朝日」)と述べていることを示し、「この発言は重い。自衛隊員に戦死者が出るのは避けがたくなる」と重ねて追及しました。首相は「殺し、殺される」危険が高まることをかたくなに口にしませんでした。
志位氏は「リスクを語らないのは無責任で不誠実だ。自衛隊の活動地域を大幅に拡大しておきながら『隊員の安全確保』をいうのは、まったくの自己矛盾、荒唐無稽、ブラックジョークの類いだ」と厳しく指摘しました。
派兵自衛官の異常な自殺率
志位 今以上の若者の犠牲避けがたい
首相、質問に答えず
「54人の自殺というのは深刻な数字だ」―。志位氏は、アフガニスタン、イラクの両戦争に派兵された自衛官が国民平均の約9~18倍という異常な高率で自殺している実態を明らかにした防衛省の真部朗人事教育局長の答弁を受け、こう指摘しました。
志位氏は、イラク派兵隊員4000人を対象にした内部調査で1~3割の隊員が心の不調を訴えていたと報じたNHK番組の内容を紹介。「『非戦闘地域』が建前の活動でも、これだけの若者が犠牲になった。『戦地』派兵でこれをはるかに超える負担と犠牲を強いることになるのは避けがたい」と追及しました。
首相は「大変胸の痛む話だ」と述べたものの、質問には答えませんでした。
志位氏は、アフガニスタン、イラクの両戦争の帰還米兵200万人以上のうち60万人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い、年間8000人もの自殺者が出ている実態を提示。戦場で命を奪われる恐怖とともに、命を奪ったことへの心の痛みがPTSDの原因とされていることにふれ、「日本の若者を『戦地』に派兵し、『殺し、殺される』戦闘をさせる。それがもたらす心身への深刻な傷痕は計り知れない。若者を戦場に送るわけにはいかない」と強調しました。
後方支援
日本政府だけが使う造語
国際法上、攻撃の目標に
「イラク戦争やアフガニスタン戦争において、武力行使を目的にして戦闘に参加することはない」。戦争法案をめぐる論戦で、安倍晋三首相はこう繰り返しています。では、「武力行使が『目的』」ではなく、「後方支援」が目的だったとしても、その活動は、国際的にどのように見られるか―。志位委員長は「『後方支援』という言葉は、日本政府だけが使っている造語であり、国際的には兵たん(ロジスティクス)という」と切り出し、安倍首相をただしました。
そもそも日米両政府が4月27日に合意した新たな日米軍事協力の指針(ガイドライン)でも、後方支援は英文では「ロジスティクス・サポート」とされています。
志位氏がパネルで示したのは、国際的な武力紛争が起こった際に、戦争の犠牲者を保護し、文民や民用物を保護することを定めたジュネーブ4条約のうちの「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第1議定書)」。同52条「民用物の一般的保護」では、兵たんは「軍事活動に効果的に資する」活動であり、戦時国際法上、軍事攻撃の目標となると解されています。
「自衛隊の艦船、航空機等は国際法上民用物とは考えられない。(追加議定書の)第2項に該当するのは当然だ」(東郷和彦外務省条約局長・当時)
志位氏は1999年3月26日の衆院ガイドライン特別委員会での自身と東郷氏のやりとりを答弁させた上で、「兵たんが国際法上、軍事攻撃の目標とされるということは、兵たんが戦争行為の一部であり、武力行使と不可分の活動だと国際社会でみなされていることを意味するものにほかならない」と強調しました。
また、志位氏は、米海兵隊が現在使用している「海兵隊教本」が兵たんについて、「軍事作戦のいかなる実施の試みにおいても不可欠な部分だ」「戦争の一機能であるがゆえに(略)部隊及び要員は、暴力及び危険の対象となる」としていることを紹介しました。
安倍首相は「兵たんは重要だ」と語り、「後方支援」が兵たんであることを認めました。その一方で「安全確保されている場所で行う」と繰り返しました。
志位氏は「『武力の行使と一体でない後方支援』など世界ではおよそ通用するものではない」と指摘。「しかも、今回の法案では、『非戦闘地域に限る』とか『弾薬の補給をやらない』とかの『歯止め』すら外してしまっている。『武力の行使と一体でない後方支援』というごまかしはいよいよ通用するものではない」と強調しました。
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