問題の補助金は、復興予算をトヨタや東芝など被災地外の大企業を中心にばらまいた「国内立地推進事業費補助金」(総額約3000億円)です。交付決定は12年2月と7月の2回。政治資金規正法は、国の補助金の交付決定から1年以内の寄付(献金)を原則禁止しています。
本紙は、補助金による“復興予算の流用”を追及。あわせて、12年分の国政協の収入を調査し、補助金交付決定から1年以内の献金が2億円超だと報じて、“復興予算の還流”を批判してきました。
今回、13年分の国政協の収入についても調査し、新たに約1億円の献金が判明。違法の疑いがある献金は、12年分と合わせて37社、計3億3463万円になりました。
金額が多い順にトヨタが5140万円、東芝と日立が4250万円、三菱電機が2730万円と続きます。
現行の規正法は、補助金が「災害復旧」「試験研究」「調査」「利益を伴わない」にあたる場合は献金を違法としませんが、問題の補助金はこれらの例外にはあたりません。交付先の多くは被災地外の大企業による事業で、経産省は「生産ラインの増設を補助するので、利益が出るのが前提」といいます。
安倍首相は、補助金受給企業の献金について「補助金を受けたことを知らなければ違法性はない」と主張。しかし、経団連が設備投資への補助金を政府への要望に掲げ、トヨタなど国政協に献金する企業が毎年のように交付先に選ばれているのが実態です。
本紙は、復興予算を流用した立地補助金の前身の補助金についても、交付先のトヨタ、東芝などが10年、11年に国政協に計2億円超を献金(12年12月1日付)と報じました。これらの補助金を推進したのが自民党です。
予算還流 税金ばらまき献金受け取る
自民、政治担う資格あるか
復興予算を流用した国の補助金を受給する企業から、3億円超の巨額献金を受けている自民党。安倍晋三首相は法の規制を逃れようとさまざまな抜け道を主張しています。「知らなかった」などの言い逃れは通用するのか、補助金を大企業にばらまいた経緯とあわせて検証すると―。(本田祐典)自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金するトヨタ、東芝などの大企業は2012年、「国内立地推進事業費補助金」(総額約3千億円)の交付先に選ばれました。
トヨタは愛知県でのエコカー生産、東芝は三重県でのフラッシュメモリの生産で補助金を受けます。これらが、政治資金規正法が規制の例外とする「試験研究」「調査」「災害復旧」「利益を伴わない」にあたらないことは明白です。
“逃げ道”主張
本来は違法な献金について、安倍政権は二つの逃げ道を主張しています。
一つは、「補助金を受けたことを知らなければ(受け手は)違法性はない」(安倍首相)というもの。自分たちだけでも違法を免れようというのです。
しかし、問題の補助金の交付先を自民党が「知らない」ということは通用しません。
補助金が盛り込まれたのは11年度3次補正予算(同年11月)。民主党政権時でしたが、この予算は民主、自民、公明の3党協議でつくりました。
とりわけ自民党は、大企業への経済支援2千億円を民主党政権に迫り、立地補助金として実現する過程でも増額を求めました。(表)
補助金の対象は「高付加価値の成長分野」で自動車や電子機器、航空・宇宙産業などを優先。当初から、自民党を支援する財界・大企業へのばらまきが予定されていました。
もう一つの言い逃れが、「国から直接交付決定を受けていないものは問題ない」(谷垣禎一自民党幹事長)というもの。交付先の決定を民間委託などすれば、違法ではなくなるというのです。
立地補助金は、募集・選考事務を野村総研に委託。しかし実際には、経産省が野村総研と「採択先案協議」(同省の資料)を行って交付決定しました。
本紙は復興予算の流用問題を取材するなかで、「なぜ大企業を顧客とする野村総研に交付先の選考を委託したのか」と追及。経産省は「指導・監督している」と強調し、選考結果についても経産省が最終的に了承して決定したと説明しました。
増税しながら
また、たとえ完全に交付決定を民間委託しても“税金還流”に変わりありません。
安倍首相は規正法の趣旨について、「(企業に)税金が入る、それが献金になったと会計的に見えることに対して禁止をされている」(3月6日)と国会で認めています。
復興増税でつくった予算を大企業にばらまき、交付先から献金を受けとる―。違法性の有無だけでなく、政治の担い手としての資格が問われます。
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