主張
五輪開催基本計画
ムダと無理のない準備活動を
2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備は、大会組織委員会が2月末に発表した「開催基本計画」にもとづいて本格的な段階に入っています。
「基本計画」は、昨年12月に採択された国際オリンピック委員会(IOC)の行動指針「オリンピックアジェンダ2020」の趣旨を大会運営に反映させ、「オリンピック改革のスタートとなる」としています。しかし、オリンピック改革の「旗手」になれるのかは、大会組織委員会と政府、東京都が、その準備のなかで都民・国民の利益にかなう誠実な姿勢を貫けるかどうかにかかっています。
民主的な手続き必要
問われている問題の一つが、メーン会場となる新国立競技場問題です。現在の競技場はすでに解体工事が始まっていますが、景観を損ない、都民生活の負担を強いるような巨大施設に巨費を投じる当初構想から、大会後の有効利用などレガシー(遺産)の継承をはかる計画に切りかえることです。
競技ごとの会場等の設置はいまなお確定していません。東京湾の生態系に深刻な影響をおよぼす競技会場の配置や、利権誘導につながる地下鉄・道路のインフラ整備など、全面的な見直しに迫られており、早期に全体計画が明らかにされなければなりません。
自然環境や人びとの生活に影響をおよぼすだけに、会場・インフラ整備はもっとも民主主義的な手続きを必要とする問題です。この点では、「アジェンダ2020」は、「総合的な持続可能性の統治を最善なものとするために、大会組織委員会を支援する」としてIOC自身の指導性を明示しており、肝をすえてかかる必要があります。
招致段階から不鮮明だったのが東京オリンピック・パラリンピックのイメージでした。「基本計画」は大会ビジョンとして、「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」を基本コンセプトに掲げますが、いずれも抽象的です。
競技者たちが唱えている「アスリート・ファースト(選手が主人公)」も、位置づけが十分だとは言えません。IOCも「選手の体験をオリンピック競技大会の中心に据える」としているように、アスリートの提言に真摯(しんし)に耳を傾けていくべきです。
気になるのが、「日本的価値観の発信」の強調です。「おもてなし」や「調和」がオリンピック教育の内容だとしていますが、これらに特定することへの疑問も出されています。提起されているのは「オリンピックの価値に基づく教育を普及させる」(「アジェンダ2020」)であり、その意味をしっかり受けとめることです。
納得のいく進め方こそ
「基本計画」では「イノベーション(技術革新)」という用語が多用されています。意図するところは経済的効果にあり、そこに技術を動員するとしています。しかし、オリンピック・パラリンピックはスポーツを通じた国際交流が本筋であり、経済的な側面だけが突出しないよう節度ある対応が求められます。
課題を山積みにして動きだした2020東京大会の準備活動ですが、一つひとつをあいまいにせず、都民も国民も競技者も納得のいくように進めるべきです。それを踏まえて、ムダと無理のない準備に努めるよう強く希望します。
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