主張
人間らしく働く
「軟弱地盤」正す規制こそ急務
不安定な非正規雇用の拡大、「過労死」「過労自殺」まで生む長時間労働の横行、懸命に働いても貧困から抜け出せない低すぎる最低賃金―。いまの日本は働く人を守るルールがあまりに貧弱です。「岩盤」どころか、ずぶずぶの「軟弱地盤」です。ところが安倍晋三政権は「岩盤規制」打破を掲げ、さらなる労働法制の規制緩和に踏み込もうとしています。これを許せばどんな事態を引き起こすのか。日本共産党の志位和夫委員長は衆院予算委員会の基本的質疑で、日本の未来がかかった大問題を正面からただしました。人間らしく働けるルールの確立こそ急務です。
改悪は異常野放しを加速
非正規雇用が全労働者の約4割に広がるなか、とくに解決が必要なのは、つねに「首切り」の不安にさらされ「モノ」のように使い捨てられる派遣労働者の問題です。
安倍政権は、過去の国会で批判を浴び2度廃案になった労働者派遣法改悪案を三たび国会に提出する構えです。派遣労働を「臨時的・一時的業務」に限るとする大原則を突き崩す大改悪案を、首相は「正社員化へキャリアアップできる」などとあべこべに描きますが、志位氏は、それを保障する「担保」がないことを明らかにしました。過半数労働組合などの意見さえ聞けば派遣労働者を無制限に使用できるなど、歯止めもありません。
正社員の派遣社員への置き換えを大々的にすすめるのが、改悪法案の本質です。法改悪は許されません。派遣労働を臨時的・一時的業務に限定する抜本改正を行い、非正規から正社員への流れをつくることが政治の果たす役割です。
「過労死」を生む長時間労働の規制も政治の大きな責任です。日本の平均残業時間が年182時間と欧州諸国(イギリス78時間など)に比べ突出しているのは、欧州にある上限規制がないからです。
残業上限を「月45時間」などとする労使協定を求める厚生労働省の「大臣告示」はありますが、拘束力はありません。このため経団連の役員企業など日本を代表する大企業が限度を超える残業協定を結び、なかには「月80時間」など「過労死ライン」を超す協定を平然と結ぶ企業もあります。まったく異常です。これを放置する政府の姿勢もきびしく問われます。
残業上限を「月45時間」にすることは、労働者の健康と命を守るうえで医学的根拠があると政府が定めたものです。政府自身の研究を踏まえた「大臣告示」を法律化し拘束力のあるものにすべきではないか―。志位氏の道理ある提案にも首相は消極的でした。労働者の健康と命よりも財界のもうけを上に置く姿勢は、あまりに情けない政治の責任放棄です。
労働時間規制をなくす「残業代ゼロ」制度を日本の財界・大企業に与えたら、異常な長時間労働はますます野放しです。希代の悪法の国会提出は断念すべきです。
日本経済成長のためにも
貧困と格差をなくす決め手の一つ、最低賃金の底上げも待ったなしです。欧米諸国のように、中小企業支援策をとったうえで大幅引き上げを実現し、全国一律の最低賃金制度を確立すべきです。
志位氏の追及で、安倍政権の「雇用破壊」の根拠は崩れ、道理のなさは浮き彫りです。雇用ルールの確立は、日本経済を内需主導で成長させるうえでも不可欠です。