3b5e6d4f06eab97654b5160d55af3ddb0b53880f 政府は20日、自民、公明両党の安全保障法制の協議会に、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(昨年7月1日)を具体化する法案として、自衛隊による他国軍支援を地球規模で随時可能にする恒久法の新設と、周辺事態法の「制約」を取り払う抜本改定の原案を提示しました。米国が関与するあらゆる戦争・国際紛争で、自衛隊の「戦地」での軍事支援を可能にする狙いがあります。

 政府は2001年以降、米国の対テロ戦争であるアフガニスタン戦争やイラク戦争に際して、それぞれテロ対策特措法、イラク特措法などの時限立法をつくり、自衛隊を派兵してきました。(図)

 政府側が提案した恒久法は、派兵場所や期間がその都度限定される特措法と異なり、政府の判断で派兵先や期間を決めることが可能になります。

 周辺事態法(1999年成立)は、海外での米軍の戦争に自衛隊が後方支援をする枠組みで、「周辺」は「地理的概念ではない」としつつ、「中東やインド洋は想定されない」(小渕恵三首相答弁)と適用範囲を事実上「日本周辺」に限定してきました。

 しかし、政府側は20日の会合で、「周辺」の概念を削除し、地理的な制約の完全撤廃を提案しました。支援の相手国も米軍のみに限定しない方針で、同法の枠組みでも地球規模の戦争支援ができる抜本的な改悪になります。

 恒久法と周辺事態法の両方で、「非戦闘地域」や「後方地域」といった活動場所の歯止めを廃止するもので、「戦地」派兵に道を開きます。

 与党協議会座長の高村正彦自民党副総裁は会合後、恒久法と周辺事態法について「(2法を)別々(の法律)にする方向で議論が進んでいる印象だ」と説明。「(自公で)まだまとまっていない」とも述べました。自民党側出席者は周辺事態法の名称自体が「なくなる」と語りました。

解説―恐るべき「戦争国家」の柱立て

 安倍政権が20日の与党協議で提起した自衛隊派兵「恒久法」の制定と「周辺事態法の改定」によって、恐るべき「戦争する国」づくりの柱立てが明確になりました。

 安保法制協議で狙われているのは第一に、集団的自衛権行使の法的根拠を自衛隊法などに盛り込むことです。

 第二に、米軍の戦争を支援するために、いつでも世界中のどこにでも自衛隊を派兵できるようにする「恒久法の制定です。「国際貢献」の口実で、米軍が行うアフガン、イラク戦争などの戦争で米軍支援を行うものです。

 第三に、これに加え「周辺事態法」を改定し、「日本の安全確保」のための米軍の武力行使の支援の法律をつくることです。「日本の安全確保」といいながら周辺事態法から「周辺」という基礎概念を取り払い、「日本の安全」を口実に、文字通り世界中で米軍支援する枠組みです。

 第二、第三のいずれの場合も、従来の「非戦闘地域」という制約を取り払い、戦闘の現場近くまで行って支援を行い、戦闘に巻き込まれれば反撃します。また、米軍以外の戦闘参加国の支援も行うとされます。米軍主導の多国籍軍と一体化して、戦争を遂行していく体制です。

 平時から有事まで米軍への攻撃に対し、自衛隊法の武器防護規定や集団的自衛権の行使で参戦する。さらに日本が攻撃されたわけでもなく、米軍が攻撃されてもいないのに、「国際貢献」や「日本の安全」という抽象的口実で、米軍の戦争支援に乗り出していく体制の整備です。

 昨年7月1日の「閣議決定」は、安倍内閣が一方的に強行した「違憲」の決定です。あらゆる戦争、武力の行使を禁止した憲法の下で、米国が行うあらゆる戦争に参加協力する体制の整備は、憲法破壊のクーデターそのものです。

 (中祖寅一)