主張
首相施政方針演説
力で通す暴走を国民は許さぬ
安倍晋三首相の第3次政権発足後初の施政方針演説を聞きながら、怒りが湧き上がる思いでした。演説は多くの農業関係者の反対を力で押さえ込む「農政改革」の強行や原発再稼働、「アベノミクス」の推進、消費税の増税、社会保障や労働法制の改革、沖縄での米軍新基地の建設など盛りだくさんです。安保法制の整備や憲法の改定まで「戦後以来の大改革」の名で持ち出しています。それらがすべて昨年末の総選挙で示された「国民の意思」にもとづくというのですから恐れ入ります。安倍政権が力で押し通そうという暴走を、国民は決して許しはしません。
選挙は白紙委任でない
新政権発足後の所信表明演説を行ってこなかった首相は、施政方針演説の冒頭、「この道を、さらに力強く、前進せよ」というのが総選挙で示された国民の意思だと強弁しました。総選挙での審判をたてに、内政・外交など、「戦後以来の大改革」を進めていくという、まさに国民への総攻撃宣言です。
総選挙で自民・公明の与党が議席を維持しても、その結果が安倍政治を積極的に信任したものでも、安倍首相に白紙委任を与えたものでもないのはいまさらいうまでもないことです。自民党は政党の力関係を示す比例代表選挙ではわずか有権者の17%しか得票していないのに、小選挙区と合わせ議席全体では61%を確保しました。選挙制度のゆがみによるものであり、その結果で国民の信任を得たといいはることはできません。
首相は「国民の意思」といいますが、首相が進めようとしているのはどの問題も、国民のなかで批判が渦巻いている大問題です。国民の不安や批判に向き合う姿勢は首相にありません。首相は「3本の矢」の経済政策は「確実に成果をあげている」といいますが、最近の「読売」の世論調査でも安倍政権のもとで景気回復を「実感していない」という答えが79%です。この声をどう聞くのか。
首相の演説は、「農政改革」を「農家の所得を増やすための改革」といいはり、「読売」の調査でも国民の52%が反対している原発再稼働を電気料金の抑制のためであるかのようにいい逃れ、沖縄での米軍新基地建設は県民の負担軽減のためであるかのようにごまかす、まさにウソとペテンに満ちたものです。原発事故で脅かされる国民の生存と電力会社の経営をてんびんにかけることは許されません。沖縄に最新鋭の米軍基地を押し付けながら「負担軽減」などとはよくいえたものです。ウソでごまかさなければならないほど評判の悪い政策なら、強行ではなく、中止・撤回こそ政府の責任です。
「戦後70年」踏みにじる
安倍首相が、今度の国会で焦点になる集団的自衛権行使容認などの安全保障法制の見直しについてまともに説明しなかったのは、まさに都合の悪いことは国民に語らない、非民主的な姿勢そのものです。首相は今年が「戦後70年」であることにかこつけて「積極的平和主義」の推進を語っていますが、日本が再び「戦争する国」になることは戦後の反省とは正反対です。「被爆70年」を口にしながら首相は決して核廃絶とはいいません。
戦後の歴史に反し国民の意思を踏みにじる暴走が、国民との矛盾を深めるのは確実です。国民のたたかいがいよいよ重要です。
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