主張

大企業と富裕層

財界いいなりの優遇策やめよ

 貧困と格差の拡大が日本でも国際社会でも大きな問題となるなか、安倍晋三政権がもっぱら大企業に恩恵を与える法人税の実効税率引き下げを強行しようとしているのと対照的に、アメリカのオバマ政権が格差是正のために富裕層への増税などに取り組むと、あらためて主張したことが注目されています。

 安倍政権は26日から始まる通常国会に、法人税の実効税率引き下げを盛り込んだ2015年度予算案を提出する予定です。国民の願いにも国際社会の流れにも反した、異常な大企業減税は、やめさせることが重要です。

格差拡大する大企業減税

 安倍政権がねらう法人税減税は、国税と地方税合わせた法人税の実効税率を、15年度と16年度の2年間で3・29%引き下げるもので、大企業を中心とした減税額は1年目の15年度だけで1兆円を超えます。大企業の負担は軽くなりますが、法人税を払っていない赤字法人や中堅・中小企業への課税は拡大されます。安倍政権は大企業の税負担を減らせば雇用や賃金が改善するようにいいますが、実際には大企業のため込みを増やすだけで、減税は格差を拡大する大企業優遇策のきわみです。

 しかも大企業向けの減税額は赤字法人や中堅企業への課税拡大だけでは賄えず、2000億円以上もの「減税先行」になります。そのツケは17年4月から強行をねらう消費税増税です。低所得者ほど負担が重い消費税は、貧困と格差を拡大する最悪の税制です。

 日本でも貧困率の上昇が問題になっていますが、国際的にも貧困と格差の拡大が大問題です。主要国が参加する経済協力開発機構(OECD)も昨年末、格差は過去30年間で最大となっており、格差が拡大するほど経済成長が低下する、格差拡大の政策では成長できない―と指摘しました。安倍政権の大企業減税が、こうした指摘に背いているのは明白です。

 オバマ大統領が、今年の一般教書演説で「中間層支援」の取り組みを強調したのも、格差の是正が大きな社会問題になっていることを示しています。オバマ大統領は株価上昇などの恩恵が一部の富裕層に偏り、人種や所得階層による資産や教育、雇用などの格差が広がっていると批判しています。富裕層増税などで得た税収を中間・低所得者向けに再配分するとしていますが、こうした立場は安倍政権がねらう大企業減税とは対照的です。

 21日からスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)に国際的なNGO(非政府組織)が提出した報告は、このままでは世界で1%の最富裕層が世界の富の50%以上を保有することになると指摘しています。貧困と格差拡大の是正は待ったなしです。

限りがない財界の要求

 NGOの報告書は、富裕層の「ロビー活動」が世界の税制改革の「主な障害」だとも指摘しています。安倍政権が大企業減税に固執するのも、「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」をめざすことを公言するこの政権が、異常な財界・大企業いいなりの政権だからです。

 財界は、法人税をさらに引き下げる一方、消費税率を「10%台後半」に引き上げるよう求めるなど、要求に限りがありません。貧困と格差の是正にも、財界いいなりの政治をただすことが不可欠です。