主張
「イスラム国」人質
人命もてあそぶ蛮行糾弾する
「イスラム国」を名乗る武装勢力が2人の日本人男性を拘束し、日本政府に対して2億ドル(約236億円)の身代金支払いを要求する映像が20日、インターネット上に公開されました。映像に登場した覆面の男は、72時間以内に身代金を払わなければ、2人を殺害すると警告しています。
正当化しえない行為
尊い人命を取引材料にして自らの要求を通そうとする行動は、どんな理由であれ、決して正当化できません。卑劣極まりない蛮行を糾弾するとともに、犯人側が人質を直ちに解放するよう強く要求します。日本政府は映像に写った日本人男性の身元を確認しましたが、早期解決のため全力を尽くすべきです。
「イスラム国」は内戦状態に陥っているイラクとシリアを中心に活動し、両国の3分の1にあたる地域を支配下に置いているとされます。極端なイスラム法による統治を掲げ、実際には反対派や抵抗勢力を容赦なく処刑する残虐行為を繰り返しています。豊富な資金力を背景にした武力によって、支配を広げてきました。
「イスラム国」は現状の国境線や国際法を一切尊重せず、支配地域を広げるだけでなく、世界でテロ活動を呼びかけている危険な集団です。インターネットを駆使して、宣伝・勧誘ビデオを普及し、「イスラム国」の戦闘行動に参加することを呼びかけてきました。
この結果、1万5000人もの外国人を含め、戦闘員の数は約3万人に達しているとされます。
欧米諸国の多くのジャーナリストや援助機関関係者らが「イスラム国」に拘束され、多額の身代金支払いを要求される事件が繰り返されてきました。これまでに拘束されていた米英の5人の市民が、米国などによる空爆を中止しなければ殺害すると警告され、実際に残酷なやり方で「処刑」されました。
こうした「イスラム国」の主張と行動は、イスラム諸国を含め国際社会から厳しく非難されてきました。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは昨年末、「イスラム国」に拉致されたイラク北部のヤジディ教徒の女性や少女が、性的暴力を含む拷問被害を受けた例をあげて「イスラム国戦闘員は攻撃の手段としてレイプを行っており、戦争犯罪、人道に対する犯罪に相当する」と告発しています。
国連安保理は昨年8月、「イスラム国」の「テロ行為とその暴力的な過激イデオロギー、目に余る系統的で広範な人権侵害の継続、国際人道法の蹂躙(じゅうりん)をもっとも強い言葉で非難する」との決議を全会一致で採択しました。決議は、「イスラム国」の武装解除・解散を要求するとともに、外国人戦闘員の参加を防ぎ、資金源を断つ措置を盛り込みました。
安保理も一致して非難
昨年9月24日にも「イスラム国」対応のための国連安保理首脳級会合が開催され、テロ組織の活動拡大を阻止するためのさらなる措置で合意しています。
中東地域では「対テロ戦争」という名の武力介入が、民間人の犠牲を広げ、憎悪を拡大し、逆にテロの温床と口実をつくりだしてきました。こうした経過も踏まえ、「イスラム国」の蛮行を支える人的資源、収入源を断つ国際的努力が強く求められています。
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