来月10日施行を前に

 秘密保護法の施行(12月10日)を前に、国会の一角で“秘密の工事”が始まっています。同法に対応して新たに衆参各院に設置されている情報監視審査会のための審査室の工事です。動きだす秘密保護体制の実態とは―。

 「情報監視審査会のための特別の部屋でシールド工事が始まっている」

 国会職員の一人はこう述べます。秘密保護のための防護(シールド)工事がひそかに開始されているというのです。

 衆院の情報監視審査会規程には「情報監視審査会は、特定秘密の適切な保護のために必要な措置を講じた情報監視審査室において開く」とあります。

 「秘密保護のために必要な措置」とは何か。盗聴電波などに対するシールドや、パソコンをインターネットなどから切り離して情報漏えいを防ぐ技術的な措置が考えられています。それらの性能が外部に分かると、それを上回る措置に対抗できなくなるというので、その内容も工事の場所も一切秘密とされています。

 工事を担当する専門業者に対しても、「できるだけ工事現場から外に出るな」などの指示が出されているといいます。

 衆参各院に置かれる情報監視審査会には事務スタッフが置かれ、事務局体制がとられます。「責任者以外は氏名を明かせない」とされ、理由は「担当職員の名前を明かすとターゲット(標的)にされる可能性があるから」といいます。「標的」とは何か。国会職員の一人は「ハニートラップ(性的関係を利用した諜報〔ちょうほう〕活動)で狙われるからという話だ」と語ります。

 秘密保護担当にふさわしいかどうか、国会職員に対する「適性評価」の方針を定めた「国会職員の適性評価の実施に関する件」という文書が10月28日の衆院議院運営委員会で配られましたが、回覧後すべて回収されています。

 スパイ映画のような現実―。民主政治のもとでの国権の最高機関である国会に「秘密機関」を設置する異様な状況がつくりだされようとしています。

 「国会議員には、党派を問わず情報を開示するべきだ。多様な民意を代表するべき立法府の事務組織が行政機関のまねをして『秘密ゲーム』をするのは、悲劇であり喜劇だ」

 ある国会職員はこう嘆きます。

 情報監視審査会の定員は8人。少数会派に委員の割り当ては望めず、もともとチェック機能は期待できません。国会による「監視」機関ではなく、国会を政府の「秘密保護」のための従属機関とする体制です。

 さらに、非公開の情報監視審査会で「秘密」を扱った国会議員は、それを国会外で漏らせば懲役5年、国会内の他の委員会などで明らかにしても除名を含む懲罰の対象にされます。この「秘密」を扱った国会議員が所属政党に持ち帰って検討することもできません。

 施行日である12月10日に向けて、軍事・外交・原発などの重要情報を首相を頂点とした行政機関が独占し、国民の目・耳・口をふさぐ仕組みづくりが動きだしています。