主張
「アベノミクス」
経済失政を認めぬ首相の詭弁
来年10月の消費税再増税を延期し1年半後に先送りして実施するために衆院を解散すると表明した安倍晋三首相が、記者会見などで「アベノミクス」は「確実に成果をあげている」「さらに進めて(1年半後に増税できる)経済状況をつくりだすことができる」と主張しています。首相就任以来、「アベノミクス」で経済を再生して2段階で増税するという増税路線が破綻しているのに、自らの経済失政を認めないのはまったく無責任です。「アベノミクス」がうまくいっているなどというのは通用する余地のない詭弁(きべん)です。
「増税不況」深刻なのに
だいたい、安倍首相がいうように「アベノミクス」がうまくいっているのなら、消費税再増税の延期などを持ち出す必要がないではありませんか。実際には「アベノミクス」で国民の所得が増え、消費が伸びるなどというのはまったくの幻想です。日本経済は物価だけが上がって国民の実質所得が落ち込み、4月からの消費税増税が加わって消費が低迷する、深刻な「増税不況」に落ち込んでいます。国内総生産(GDP)が4~6月期に続き7~9月期も2期連続のマイナス成長になったことがなによりの経済失政の証明です。
にもかかわらず安倍首相は、雇用が増え、賃金も上がっているから、「アベノミクス」は成果をあげているといいます。雇用は100万人以上増えたといいますが、増えたのは派遣やパートなど非正規の労働者がほとんどで、正規雇用の労働者は2年間で22万人も減っています。首相がよくあげる求職者と求人を比較した有効求人倍率も、正社員の求人倍率は9月には0・67倍で、前月よりも下回りました。求職者3人に2人しか正社員の職につけない状態です。
首相が2%も上がったという賃金も、上がったのは一部の大企業で、上げ幅は消費税増税分に達せず、勤労者の実質賃金は9月まで15カ月連続で前年同月を下回っています。GDPで見た全体の雇用者報酬も、名目では伸びても実質では7~9月期まで3期連続、1年前を下回るありさまです。
安倍政権が進める「アベノミクス」は、異常な金融緩和と財政拡大、「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」をめざす規制緩和が3本柱です。大企業がもうかれば賃金も上がり消費も増えるという「トリクルダウン(滴り落ち)」の政策で、国民の所得や消費を増やす対策はありません。大企業はもうけを増やしてため込み、大資産家は株高でうるおっても、国民の暮らしはよくなりません。「アベノミクス」がうまくいっているというのは、大企業や大資産家のことしか首相の眼中にはない証拠です。
加速すれば破壊を拡大
こうした「アベノミクス」を続ければ、景気がよくなるというのもウソです。先月末、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が金融緩和を追加したため株高とともに円安がさらに進み、国民の暮らしをいっそう圧迫しています。安倍首相は経済対策のてこ入れを持ち出していますが、それをうけ財界中心の経済財政諮問会議が持ち出したが「法人税改革」の実行や社会保障費の削減です。
「アベノミクス」の加速は暮らしをさらに破壊します。「アベノミクス」は、消費税再増税とともにやめさせるしかありません。