太田昭宏国土交通相は17日、JR東海のリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間の先行開業について工事計画の認可を強行しました。自然や生活を壊し、国民的合意もない浪費の巨大開発を、巨大都市圏形成を求める財界の要求に応えて推進するものです。
リニア計画については、路線の86%が地下トンネルという前代未聞の工事によって発生するぼう大な残土や、水枯れ・異常出水、大量の電力消費、電磁波の影響など、環境相も「環境破壊は枚挙にいとまがない」と指摘し、自治体や住民から認可すべきでないとの声が高まっていました。
太田氏は記者会見で「地域の理解」「環境保全」をJR側に求める考えをのべざるをえませんでした。
安倍内閣は、リニア新幹線で「スーパー・メガリージョン(巨大都市圏)を形成し、世界を先導していく」(国土のグランドデザイン)としています。
2027年開業予定の東京・品川から名古屋までの工費は、車両費などを含めて5兆5235億円。45年には大阪まで延伸する計画で、総工費は9兆円を超える見込みです。工費はJR東海の負担ですが、膨れ上がるのは必至。国民の負担となる危険性が高く、与党などは国の財政支援を求めています。
需要も採算性も乏しいと指摘されており、太田氏は「国民生活や経済活動に大きなインパクトをもたらす重要なプロジェクト」とごまかして推進する考えを表明しました。
リニア中央新幹線工事実施計画認可に抗議する
穀田党議員団プロジェクトチーム責任者が談話
日本共産党国会議員団のリニア中央新幹線問題プロジェクトチームの穀田恵二責任者が17日に発表した談話「リニア中央新幹線工事実施計画認可に抗議する―環境問題を置き去りにしたままのJR東海の工事着工は許されない」は次のとおりです。
一、太田国土交通大臣は、JR東海によるリニア中央新幹線工事実施計画を認可した。
これは、大規模で深刻な環境破壊を引き起こすとの懸念を一顧だにしないものである。環境問題を置き去りにしたJR東海の工事実施計画を認可しないよう求める自治体・住民の声を無視するものであり、強く抗議する。
JR東海の環境影響評価書補正版は、環境保全と住民への丁寧な説明を求めた大臣意見にさえもおよそ応えるものになっていない。また、「生活環境負荷低減策が具体的に示されるまで工事実施計画の認可をしないこと」(大鹿村村議会意見書)など、JR東海の不誠実な対応に対する不信と懸念が広がっている。こうした声に何ら答えることなく、認可をした国の責任は極めて重大といわねばならない。
一、工事実施計画の認可と実際に工事に着工することは別である。JR東海は、工事着工を強行すべきではない。南アルプスを貫通するなど環境破壊を起こす工事を、住民や関係自治体との合意はおろか、まともな説明さえもしないまま強行することは許されない。
JR東海には、「地方公共団体及び住民の理解」(国交大臣意見)を得る義務があり、誠意ある対応を行うべきである。工期を優先し工事着工を急ぐJR東海の方針に対して「懸念が払拭(ふっしょく)されるまで着工すべきでない」(田辺信宏静岡市長)など、沿線自治体から厳しい批判が相次いでいるのは当然である。
国は、自治体・住民の不安に応えて、JR東海を厳しく指導・監督するべきである。
一、今求められているのは、リニア中央新幹線建設そのものについての国民的議論である。
日本共産党は、今後とも、リニア建設に伴う環境破壊その他の問題に不安を持つすべての自治体・住民の方々と力を合わせ奮闘する。