主張
実質賃金の低下
14カ月連続の重み受け止めよ
これはもう、「危険水域」というしかありません。厚生労働省が17日発表した毎月勤労統計調査(毎勤統計、8月分確報)で、勤労者の賃金が物価上昇分を差し引いた実質で、14カ月連続のマイナスとなったことが確定したのです。1年以上にわたって実質賃金が減り続けているというのは異常このうえなく、勤労者の暮らしはじりじりと悪化しています。企業がもうけを増やせば賃金も上がると、安倍晋三首相が唱える経済の「好循環」はまったくウソです。賃金を引き上げ、実質賃金を改善するとともに、消費税の再増税は直ちに中止すべきです。
「アベノミクス」の破綻
8月分の確報によれば、実質賃金は1年前にくらべ、3・1%の減少です。マイナス幅は、9月末に発表された速報での2・6%減よりさらに悪化しました。
実質賃金は、勤労者の現金給与総額(名目)から消費者物価の上昇を差し引いたものですが、昨年6月に0・3%の増加になったのを最後に、14カ月連続のマイナスです。しかも昨年から今年4月までは1%台からせいぜい2%の減少でしたが、消費税増税があった今年4月に3%を超すマイナスに落ち込み、春闘などがあった以降も減少が続いています。
実質賃金の落ち込みは4月の消費税増税前から始まっており、「アベノミクス」を自称する、安倍政権の経済政策の影響は明らかです。「アベノミクス」は、インフレ政策で物価を上昇させることを目標にした金融政策と、公共投資など財政支出の拡大、さらに「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」を掲げた規制の緩和・撤廃などが柱です。その結果が大企業のもうけと内部留保を増やしただけで、国民の暮らしはよくならず、食料品やガソリンなど消費者物価を上昇させているのです。安倍政権が発足してからほとんどの期間に実質賃金の低下が続いているのは、「アベノミクス」が「好循環」を生むどころか、百害あって一利もないことを証明しています。
それに加えて4月からの消費税増税が、暮らしに打撃を与えています。消費税率の5%から8%への引き上げは、消費者物価を一気に上昇させ、実質賃金を大幅に低下させました。毎月3%もの実質賃金の目減りが続けば、国民の暮らしは目に見えて悪化します。消費が落ち込み、商店などの売り上げが減り、工場などの生産も落ち込んでいくのは明らかです。経済が「好循環」するどころか、賃金の伸び悩みと実質賃金の低下、消費の低迷、生産など経済全体の落ち込みという、まさに「悪循環」に突入しています。
悪循環を断ち切ってこそ
こうした悪循環を断ち切ってこそ、国民の暮らしもよくなり、経済も再建できます。大企業のもうけと内部留保を活用して賃金を引き上げ、雇用を拡大すること、大企業と大金持ちに応分な負担を求めて財源を確保し、社会保障の切り捨てから充実へ抜本転換することが不可欠です。
何より重要なのは、来年10月からの消費税率の10%への引き上げを中止することです。消費税増税の強行は、暮らしも経済も破綻させます。大企業のもうけ一辺倒でなく、国民の所得を増やす経済政策へ転換することが、日本経済を立て直すために求められます。