主張
GDPと消費税
大幅後退を想定内と偽る非情
4月から消費税の税率が5%から8%に引き上げられたあと、初めての4半期(4~6月期)の国内総生産(GDP)統計が発表になりました。個人消費が大幅に落ち込み、GDP全体でも実質で前期比1・7%減、年率換算では6・8%減と大幅な後退です。見過ごせないのは甘利明経済財政担当相ら安倍晋三政権の閣僚が、落ち込みは“想定内”とし、「先行き反動減は和らぐ」と楽観的見通しをふりまいていることです。来年10月からの消費税の10%への再引き上げを年内に決めようとしているからなのは明らかで、偽りの宣伝での増税は絶対に許されません。
暮らしの苦しさ見ない
消費税の増税前は駆け込み需要があったのだから、増税後は反動減で多少落ち込むのは仕方がない―甘利氏らの“想定内”ということばには、そうした響きがこめられています。しかし、それこそ消費税増税が暮らしを直撃するなかでの国民の苦しいやりくりを見ようとしない、非情な態度です。
4月からの消費税の増税は、3月まで105円で買えたものが108円になったということです。1~3月期の個人消費(民間最終消費支出)は前期に比べ2%伸びましたが、多くの国民が駆け込みで買ったのは住宅や耐久消費財ではなく、日持ちのする調味料やトイレットペーパーなどです。そうした苦しいやりくりなのに、4~6月期は一転、実質5・0%もの大幅な落ち込みです。そこにこそ、消費税増税による家計への深刻な打撃が表れています。
落ち込みが、政府が考えていたより大きく深刻なものになっていることは、統計からも明らかです。個人消費の落ち込みは、前回消費税の税率が3%から5%に増税された直後の1997年4~6月期の3・5%を上回り、同じ統計で比較できる94年以降では最大です。GDP全体の落ち込みも今回のほうが大きく、落ち込み幅は東日本大震災が起きた2011年1~3月期以来最大です。“想定内”どころの数字ではありません。
1~3月期の駆け込み需要と4~6月期の反動減をならすために、6月までの半年間で見ても、個人消費は昨年後半より0・4%の減少です。自動車販売や百貨店売り上げなどの落ち込みは、7月以降も回復していません。まさに“想定外”の落ち込みになっているのは明白です。
消費の落ち込みが大きく長引いている一番の原因は、家計の収入の伸びが物価上昇に追いついておらず、実質収入が減り続けていることです。政府の家計調査で見た勤労者世帯の実質実収入は、6月は前年同月に比べ6・6%もの減少で、9カ月連続の落ち込みです。景気がよくなれば賃金が上がり所得が増えるという「経済の好循環」はまったく実現していません。
消費税増税政治中止を
いま必要なのは、株価上昇のため大企業のもうけを増やすだけの「アベノミクス」は中止し、賃上げなどで国民の所得を大幅に増やすことです。来年10月から予定している消費税の再増税は、直ちに中止すべきです。
消費税の再増税に反対する国民世論は、最近の「読売」の調査(4日付)で66%、時事通信の調査(14日発表)では75%と反対が圧倒的です。消費税増税政治の安倍政権を追い詰めることが重要です。
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