ノバルティスファーマ社の高血圧治療薬ディオバンの臨床試験のねつ造データによる論文不正が刑事事件となっています。こうしたなか、製薬企業のカネと臨床研究や試験のあり方を考えるために日本高血圧学会が設置した「第三者委員会」の委員ら2人が、委員会が設置された直後にノバルティス社から計1500万円の寄付を受けていたことが8日、本紙の調べでわかりました。製薬企業と研究者との関係を議論する当事者への寄付は、産学のなれ合いの深刻さを示しています。(矢野昌弘)
高血圧学会が2013年4月に設置した「臨床試験に関わる第三者委員会」は、京都府立医科大学のディオバン論文不正の発覚を受けたもの。第1回会合が同月26日に行われ、5月13日に報告書をまとめています。
本紙が情報公開で入手した資料によると、委員とオブザーバー計7人のうち、委員の森下竜一大阪大学大学院教授(高血圧学会理事)が第1回会合直後の4月30日にノバ社から1000万円の奨学寄付を研究室あてに受けています。12月には、さらに300万円。
オブザーバーで参加した高血圧学会の堀内正嗣理事長(愛媛大学大学院教授)は、同年8月に200万円の寄付をノバ社から受け取りました。
寄付の時期は、ディオバンの臨床試験を行った5大学にノバ社が計11億円余の寄付をしたことが判明し、研究の公平性に疑念があがった時期です。
第三者委員会がまとめた報告書は、「寄付者が企業である場合には、なんらかの見返りやアカデミアとのコネクションの構築に利用される可能性があり」としつつも、企業から奨学寄付金を受けることは「問題がない」と結論づけています。
情報公開資料によると、これらを含めて堀内理事長は07年度から13年度で計3700万円、森下教授は09年度から13年度に2700万円の寄付をノバ社から受けています。
堀内、森下の両氏は、医学情報誌にたびたび登場し、ディオバンを高く評価していました。
本紙の取材に対して「ノバルティス社に関して、現在、世間をにぎわせている状況であり、関連するであろう事案についてコメントすることは差し控えたい」(大阪大学)などとして、両氏から回答を得られませんでした。
高血圧治療薬のデータ操作事件 他の薬より脳卒中や狭心症を防ぐ効果が優れていると誇大に宣伝したとして、薬事法違反の容疑でノバルティス社の元社員が6月、東京地検特捜部に逮捕された事件。逮捕された元社員がデータ解析を担当した京都府立医大など5大学の論文は、データ操作の疑いが浮上し、4大学が論文を撤回しました。
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