主張
「戦闘地域」派兵
若者が命奪われる事態許すな
安倍晋三首相の集団的自衛権の行使容認に向けた検討表明を受け、安全保障法制に関する自民・公明の与党協議が続いています。協議は、政府が集団的自衛権行使などを必要とする例として示した「事例集」が検討のたたき台となっています。その中の大きな焦点が、自衛隊による米軍などへの輸送、補給、医療といった兵たん活動(後方支援)を「戦闘地域」で行う問題です。「後方支援」であっても「戦闘地域」で行えば、戦闘に巻き込まれ、自衛隊員が“殺し、殺される”事態になることは明瞭であり、極めて重大です。
首相のごまかし暴露
首相は、集団的自衛権行使のため憲法解釈変更の検討を表明した記者会見(5月15日)で「日本が再び戦争をする国になるといった誤解がある。しかし、そんなことは断じてあり得ない」「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と強調しました。国会答弁でも「アフガン戦争において武力行使を目的として戦闘に米軍とともに参加するということはない」と繰り返しました。こうした首相のごまかしは、日本共産党の志位和夫委員長の衆院予算委員会(28日)での質問で崩れました。
志位氏はイラク戦争やアフガン戦争に際して自衛隊派兵の根拠になった特別措置法に規定された「武力行使はしない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの“歯止め”は、集団的自衛権の行使容認によって外されてしまうと追及しました。首相は、直接の戦闘行動ではない「後方支援」について「戦闘地域に行ってはならない」との“歯止め”を残すと言わず、逆に「戦闘地域」の考え方の見直しにまで踏み込みました。
狙いは、政府の「事例集」からも明らかです。「戦闘地域」である多国籍軍の補給拠点に自衛隊が行くことができないイラストを示し、米国などの要請を受けても自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限るという「制約」があるとし、「後方支援の分野で積極的な役割を果たすことができなくていいのか」と見直しの必要を強調しています。
「後方支援」であっても「戦闘地域」で活動すればどうなるか―。志位氏が質問で例に挙げたアフガン戦争でのNATO(北大西洋条約機構)軍の実態は悲惨な結果を物語っています。
アフガン戦争に際し、NATO軍は米国の要請を受けて集団的自衛権を行使し参戦しました。NATO諸国が集団的自衛権の発動として決定した支援は直接の戦闘行動ではなく「後方支援」でしたが、今日までに21カ国1031人の犠牲者を出しています。「戦闘地域に行ってはならない」という“歯止め”がなかったためです。
“歯止め”がなくなる
「事例集」は、「武力行使はしない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの“歯止め”のうち後者だけの見直しを示唆しています。しかし、「戦闘地域に行ってはならない」という“歯止め”は、「武力行使はしない」ことを担保しているものです。それを見直せば、「武力行使はしない」という文言は残ったとしても事実上、空文化してしまいます。「米国の戦争のため日本の若者が戦地に送られ、血を流す」ことを阻む世論と運動が急がれます。
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