「限定的な行使」「必要最小限度」―こういって集団的自衛権を小さく見せかけて行使容認を推し進める安倍晋三首相。28日の衆院予算委員会で、日本共産党の志位和夫委員長は、集団的自衛権行使の容認論が「海外で武力行使しない」との憲法上の“歯止め”を外して、国のあり方を変える大転換で日本の若者の血を流すことになると迫りました。
憲法と集団的自衛権
法制局長官「国際関係で武力用いることを広く禁ずる」
志位「行使容認は国のあり方の大転換だ」
志位氏はまず、集団的自衛権とはどんな権利なのか、その定義を尋ねました。
横畠裕介内閣法制局長官 自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力を持って阻止することが正当化される権利と解されている。
つまり、「自衛」という名がついていますが、日本への武力攻撃がなくても他国のために武力行使するということです。
志位氏は、従来の政府の憲法解釈が認める武力行使は、国会答弁で「我が国自身が外部から武力攻撃を受けた場合における必要最小限度の実力の行使を除き、いわゆる侵略戦争に限らず国際関係において武力を用いることを広く禁ずる」(2003年10月、秋山收(おさむ)内閣法制局長官)とされてきたと示しました。(表)
志位 集団的自衛権の行使を容認し、日本に対する武力攻撃がなくても他国のために武力行使できるとなれば、この憲法解釈は根底から転換させられることになる。それは「海外で武力行使をしない」という憲法上の歯止めを外すことになる。国のあり方の大転換だ。
“二つの歯止め”どうなる
志位「アフガン・イラク戦争のような場合になくすのか」
安倍首相(歯止め残すと明言せず)
では、そのような大転換に踏み込んだら、どうなるのか。
日本は米国の強い要請に応え、イラク、アフガニスタンに自衛隊を派兵しました。志位氏は、この派兵の根拠になった特別措置法の第2条を示しました。
「要するに、自衛隊は米軍などへの支援活動を実施するけれども、その場合でも『武力行使はしてはならない』『戦闘地域に行ってはならない』という“二つの歯止め”が明記されていた」と志位氏。この“二つの歯止め”によって、自衛隊の実際の活動もインド洋での給油、イラクでの給水や空輸にとどまったと指摘しました。
しかし、集団的自衛権の行使ができるとなればどうなるか――。
志位 アフガン戦争、イラク戦争のような場合に、これまであった“二つの歯止め”がなくなるのではないか。
首相 武力行使を目的として戦闘行為に参加することは検討しない。
首相は質問には答えず、こう言いつのりました。志位氏は「武力行使をしないとは言わなかった」ことを指摘し、さらに追及しました。
「現実に集団的自衛権が問題になったのはアフガン、イラク戦争だ」
志位氏はこう指摘し、ブッシュ大統領の特別補佐官を務めたマイケル・グリーン氏が、日本が集団的自衛権が行使できるようになればイラク、アフガン戦争でNATO(北大西洋条約機構)と同じような米軍支援ができるようになると述べていることを紹介。また、イラク戦争当時にパウエル米国務長官首席補佐官だったローレンス・ウィルカーソン氏も「日本が当時、集団的自衛権の行使ができたら、日本に参戦するよう要請したか」と問われ、「イエス。日本から二つの部隊を送ると戦略に書いたでしょう」と最近のテレビ番組でも語っていることを示しました。
志位 重ねて聞く。「武力行使はしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」という“二つの歯止め”はどうなるのか。残すのか、残さないのか。
それでも安倍首相は、「武力行使を目的とした戦闘行動に参加することはない」と繰り返すだけでした。
そこで志位氏は「補給、輸送、医療などの兵站(へいたん)活動、いわゆる後方支援はどうするのか」と迫りました。
政府はこれまで、これらの「後方支援」であっても戦闘地域で行わないことを建前にしてきました。戦闘地域では他国の「武力行使と一体化」し、相手の攻撃を招き、武力行使をすることになるという理由です。
志位 ともかくも政府自らがつくった歯止めだ。自衛隊がどんな活動であれ、「戦闘地域に行ってはならない」という歯止めを残すのか、残さないのか。
首相 武力の行使との一体化論を踏襲するが、従来から政府が示してきた判断基準をより精緻なものにすることは今後の検討課題だ。従来から述べている非戦闘地域、後方地域という概念も検討が必要と考えている。
首相はこう述べ、戦闘地域で活動しないというこれまでの政府見解を見直し、戦闘地域で活動することを否定しませんでした。
志位氏は「自衛隊の活動を拡大する方向での検討ということだ。きわめて重大だ。歯止めを無くす方向だ。自衛隊が戦闘地域に行くこともありうるということだ」と述べ、安倍内閣の狙いを批判しました。
「戦地行かぬ」の歯止め外せば
首相「武力行使を目的にはしない」
志位「戦争の泥沼にはまり込み、NATO諸国も犠牲者多数」
そのうえで志位氏は、「『戦闘地域に行ってはならない』という歯止めがなくなったらどうなるか」と提起。アフガン戦争に参戦したNATO諸国と、日本が同じになるのではないかと追及しました。
安倍首相は「NATO軍は武力の行使を目的として戦闘に参加している。これはできない。決定的な違いと言っていい」と答弁しました。
志位氏は、アフガン戦争に際しNATO諸国が集団的自衛権の発動として決めた8分野の支援をパネル(表)で示しました。いずれも直接の戦闘行為ではなく兵站活動、“後方支援”ばかりです。
ところが、米軍の犠牲者2322人に対し、米軍を除くNATO諸国21カ国の犠牲者も1031人にのぼります。
なぜNATO諸国にこれほど犠牲者が出たのか。志位氏はその理由を、「日本のような『武力行使してはいけない』『戦闘地域に行ってはならない』という歯止めがなかったからだ」と指摘しました。たとえ兵站活動であっても米軍の戦争に参戦し戦闘地域に行けば、相手側の攻撃の対象になって戦闘に巻き込まれてしまうのです。
志位氏は、安倍首相の著書『この国を守る決意』から、「軍事同盟というのは“血の同盟”です」と集団的自衛権の必要性を説いた一節を引用しました。
志位 集団的自衛権行使は端的に言えば、米国の戦争のために日本の若者の血を流すということではないか。
首相 米国に要請されればただちに集団的自衛権を行使するというものではない。
志位 自民党の石破茂幹事長は「自衛隊が他国民のために血を流すことになるかもしれない」と述べている。
志位氏は最後に、「これほど重大な『海外で戦争する国』への転換を、一内閣の閣議決定で憲法解釈の変更で強行することなど立憲主義の否定だ」と述べ、憲法破壊の暴挙の中止を強く求めました。
非戦闘地域と後方地域 政府は憲法9条の下、海外での武力行使を禁じていますが、アフガニスタン、イラクの両戦争へ派兵を可能にするため、戦場を「戦闘地域」と「非戦闘地域」という概念に区分。「非戦闘地域」に活動を限定することで「他国の武力の行使との一体化」にあたらないとの“論理”をつくりあげました。朝鮮半島有事などでも同じ理屈で、自衛隊の活動は「後方地域支援」に限定されています。
“二つの歯止め”残すといわず
「海外で戦争する国づくり」明瞭に
集団的自衛権行使容認 志位委員長が質問後会見
日本共産党の志位和夫委員長は28日、衆院予算委員会での質問を受けて記者会見し、「集団的自衛権行使容認の核心部分が、『海外で武力行使しない』『戦闘地域にはいかない』という憲法上の『歯止め』を外し、文字通り『海外で戦争する国づくり』にあるということが明瞭になった」と述べました。
志位氏は、“二つの歯止め”を残すのかとの追及に、安倍晋三首相が、「残す」とは言わなかったと強調。「『武力行使を目的とした活動はやらない』と繰り返したが、これは『武力行使をやらない』ということとはまったく違う」と指摘しました。
とくに、兵站(へいたん)活動・後方支援について、「戦闘地域ではやらない」という「歯止め」を最後まで「残す」とは言わなかったことを指摘。「逆に首相は、『後方支援』については、『戦闘地域』『非戦闘地域』という概念も含めて検討すると述べた。自衛隊の活動範囲を広げる方向で検討することであり、結局、『戦闘地域』に行くことがはっきりした」と強調しました。
記者から「法律や首相の判断が『歯止め』になるのか」と問われた志位氏は、「ならない。時の政権党が多数を持っているのだから、法律はいくらでも作ることができ、首相の判断にいたっては、歯止めというのもおこがましい。『海外で武力行使してはならない』という憲法上の『歯止め』をはずしてしまうわけだから、残る『歯止め』はなく、『歯止め』なしが明りょうとなった」と答えました。
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