政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は28日、財界・大企業の要求に応えて労働時間の規制をなくし、際限なく働かせることができる制度を導入することで一致しました。労働者・国民は「過労死促進・残業代ゼロ」制度だとして強く反対しており、厳しい批判は免れません。
この日の会合では長谷川閑史(やすちか)経済同友会代表幹事が、企画・開発部門のリーダーなど「中核・専門的人材」や「幹部候補」を対象に“残業代ゼロ”制度を導入することを提案。年収の要件も設けず、幅広い労働者を対象にする考えを示しました。
これに対し厚労省は、「高度専門職」を対象にするよう主張。中核・専門部門の労働者については、現行の「裁量労働制」(実際の労働時間に関係なく、労使で決めた時間を労働時間とみなす)の拡大で対応していく考えを示しました。
両案とも労働時間規制に大穴をあけることになり、対象となる労働者の範囲もあいまいでなし崩し的に拡大する危険性を抱えています。
解説
過労死まで自己責任に
労働基準法では、1日8時間、週40時間と定め、これを超えて働かせる場合は、労使協定を結んで残業代を支払うよう厳しく規制しています。これがなくなれば、労働者は成果をあげるために際限なく働かされ、いくら働いても残業代も支払われず、過労死しても「自己責任」として片付けられかねません。
安倍首相は2007年にも時間規制を撤廃する「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入をねらいましたが、国民・労働者の反対で断念に追い込まれました。これに反省もなく新たな装いで導入をねらうものです。今国会では過労死防止対策推進法案が全会一致で衆院で可決され、成立する見込みとなっており、真っ向から逆らう内容です。 (深山直人)