主張
集団的自衛権行使
歴史逆行の危険な野望許さず
安倍晋三首相は15日、日本が武力攻撃を受けていないのに他国のために武力攻撃をする集団的自衛権の行使を禁じた現行憲法解釈の見直しを含め、法整備の検討に入ることを正式に表明しました。「憲法9条抹殺」の勧めともいうべき首相の「有識者」懇談会(安保法制懇)の報告書を受けての表明です。日本を「海外で戦争する国」につくり変えようという、歴史逆行の危険な暴走です。
悪質な「限定容認」論
安保法制懇報告書には、憲法9条の下でも集団的自衛権の行使や軍事制裁を目的にした多国籍軍への参加が全面的に可能だという提言が盛り込まれました。首相は、9条をあって亡きものにする提言への国民の強い批判を意識し、「採用できない」と述べざるを得ませんでした。一方で、「限定的に集団的自衛権を行使することは許される」という提言については検討を加速する姿勢を示しました。
集団的自衛権行使の「限定的容認」だからといって、事の重大さはまったく減じません。
歴代内閣は、海外での武力行使である集団的自衛権の行使はどんな条件を付けても憲法解釈の変更で認めることはできないという立場をとってきました。
米国のアフガニスタン戦争やイラク戦争に際し自衛隊派兵を強行した小泉純一郎首相でさえ、集団的自衛権と憲法の関係について「解釈変更の手段が便宜的、意図的に用いられるならば、…政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念される」「憲法について見解が対立する問題があれば、便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋」だと表明していました。(2004年2月27日、参院本会議)
主権者である国民が憲法によって国家権力を縛る原理としての立憲主義を保守政治なりに守ろうとしてきたといえます。安倍首相が一内閣の勝手な判断で憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使容認に踏み込もうとするのは、立憲主義の乱暴な否定です。
安保法制懇報告書は、日本への武力攻撃に対する個別的自衛権だけではなく、集団的自衛権の行使も「必要最小限度」の「自衛のための措置」に含まれるとし、「限定的」に認めることが可能であるかのように述べています。これは、憲法9条の下で「自衛のための措置」は「必要最小限度の範囲にとどまるべき」だという従来の政府解釈を極めて恣意(しい)的にゆがめ、悪用したものです。しかし、政府が説明しているように、「必要最小限度の範囲」とは日本への武力攻撃を排除する場合に限られるという意味であり、集団的自衛権の行使が含まれ得ないのは自明です。
拡大解釈自由に可能
報告書は、「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」ことを集団的自衛権の発動要件にしました。しかし、その判断基準は、「日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれうる」などと抽象的です。
時の政権の判断で拡大解釈が可能であり、際限なく海外での武力行使に道を開くことになります。安倍首相の危険な野望に対し大きく広がりつつある反対世論をさらに強める運動が急がれます。
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