主張
渡辺代表の借入金
この説明では“支離滅裂”だ
みんなの党の渡辺喜美代表が、化粧品会社の会長から2010年の参院選と12年の総選挙の直前に合わせて8億円もの資金を借り入れていたことが週刊誌で報道されて、1週間あまりたちました。渡辺氏は資産報告書の借入金の金額を訂正するとしただけで、借り入れに政治資金規正法や公職選挙法上の問題はないという態度ですが、その説明は支離滅裂です。なにより国民にまともな説明はなく、国民に選ばれた国会議員としても、公党の代表としても、その態度はあまりに不誠実です。
報告できない政治資金?
渡辺氏は8億円の借り入れについて、12年末国会に提出した資産報告書に2億5000万円の借入金があると報告しただけで、毎年の政治資金収支報告書にも、選挙の際の選挙運動費用収支報告書にもまったく記載していません。渡辺氏が政治資金として借り入れたのなら政治資金収支報告書に記載し国民に公開する義務があり、選挙資金として借り入れたのなら公選法にもとづいて選挙運動費用として届け出る義務があります。
資金を提供した化粧品会社の会長は、依頼されたのがいずれも選挙の直前であり、当然選挙資金に使われるものだと認識していたと証言しています。実際、東京都の猪瀬直樹前知事が一昨年の都知事選の直前、医療法人徳洲会グループから5000万円借り入れ、選挙には使わなかったというものの報告を怠った責任を問われました。猪瀬氏は知事を辞任し公選法違反でも略式起訴されたように、報告を怠った責任は重大です。
渡辺氏は、みんなの党や自らのインターネットのホームページ、一部のインタビューなどで、借り入れた資金は「個人的なものに使った」「党の躍進のために必要だが、政治資金が使えないものがある」などと説明しています。「個人的な支出」の例として渡辺氏が唯一あげたのは「酉(とり)の市」で大きな熊手を買ったなどというものですが、高くても数十万円の熊手の購入で億単位の資金を説明しようなどとは国民を愚ろうしています。
そのうえ渡辺氏が「政治資金が使えない」活動資金としてあげているのが「情報収集とか世論対策とか、いわゆる機密費の類」(『サンデー毎日』でのインタビュー)というものです。政治資金や選挙資金として公表できない「機密費」のような資金というのは、それこそ違法な政治活動や、買収、供応など公選法違反の活動にでも使ったというのか。「政治資金が使えない」活動資金などという説明自体、自らの活動の不透明さを証明したようなものです。渡辺氏が資金の使い道を説明できないことこそ問題であり、国会議員としても公党の代表としても、責任がきびしく問われるというしかありません。
国民裏切っている自覚を
政治資金規正法が政治家に収支報告書の定期的な届け出と公開を求めているのは、政党や政治家の政治活動が「国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」です。政治家が都合のいい政治資金は届け出るが、都合の悪い政治資金は届け出ないとなれば、その活動が国民の「監視と批判」の下で行われることにはなりません。渡辺氏の主張は、それこそ政治資金規正法の趣旨をゆがめ、主権者である国民を裏切るものであることを自ら自覚すべきです。
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