みんなの党の渡辺喜美代表が、化粧品会社「DHC」(東京都港区)の吉田嘉明会長から8億円もの大金を借り入れていたことは衝撃をよんでいます。何のために借りたのか、何に使ったのか、渡辺氏は公党の党首として国民の疑問に答える責任があります。 (「政治とカネ」問題取材班)
何のために借りたか
渡辺氏は、自民党の副総理や蔵相などを務めた渡辺美智雄氏(1995年9月死去)の長男で、96年10月の衆院選で地盤を引き継ぎ初当選。2006年12月、第1次安倍内閣で行政改革担当相を務めた後、09年1月、自民党を離党し、同年8月、みんなの党を結成しました。
吉田氏は、『週刊新潮』(4月3日号)に手記を寄せ、渡辺氏に2回にわたって計8億円を貸したことを告発しました。
渡辺氏は、「選挙資金として借りたわけではない」とあくまで個人的な借り入れだと弁明しています。
ところが、1回目の3億円を借りたのは、10年6月30日で、7月の参院選の直前です。みんなの党は、参院選に44人を立て、10人が当選しています。
12年11月21日の5億円は、同年12月の衆院選が事実上、スタートしていた時期です。69人を立て、18人が当選しました。
貸した吉田氏が「8億円ものカネを選挙以外に使うとは思えない」と主張しているとおり、吉田氏からの8億円が、選挙に使われたと考えるのが自然です。渡辺氏の選挙運動費用収支報告書には、8億円の記載がなく、公職選挙法に違反する可能性があります。
何に使ったか
27日の会見で、渡辺氏は、選挙目的の借金ではないとするため、使途の内訳について、「政治家として生きていくうえで必要なもろもろの費用として使わせてもらった」と説明。「会議費、交際費、旅費」などをあげ、「政治資金を使うのには、ふさわしくない支出もある」とのべました。その「ふさわしくない支出」として、具体的にあげたのは、酉(とり)の市で大きな熊手を購入したという話だけ。
会見で「(8億円)全部、使い切ったのか」との質問に、渡辺氏は「手元にはない」といいましたが、8億円ものカネを短期間に一体、何に使ったのか―。
しかも、会議費や交際費、旅費は政治活動そのものです。渡辺氏の政治資金収支報告書には、記載がなく、政治資金規正法の虚偽記入に抵触する恐れがあります。
DHCとの関係は
化粧品とサプリメントを取り扱っているDHCの前身は吉田氏が72年に創業した委託翻訳会社「大学翻訳センター」です。04年に、健康食品の広告などで景品表示法違反の疑いがあるとして、消費者団体から公正取引委員会に処分を要望され、薬事法違反(医薬品効能効果の標ぼう)の疑いで東京都から改善指導を受けたことがあります。
吉田氏は、週刊誌で「厚労省の規制チェックは他の省庁と比べても特別煩わしく、何やかやと縛りをかけて来ます」とのべ、“脱官僚”を主張していた渡辺氏に興味を持ったとしています。
吉田氏は、渡辺氏が、みんなの党を結党する2カ月前の09年6月、渡辺氏から「新党設立資金のために」と頼まれ、渡辺氏のファミリー企業「渡辺美智雄経営センター」が所有する栃木県内の約2900平方メートルの土地を約1億8458万円で購入しています。
また、渡辺氏が代表を務める政党支部や資金管理団体などに、個人としてできる制限額いっぱいの献金(年2000万円)やパーティー券購入(150万円)をしています。
渡辺氏は「無駄な規制は民間活力を生かした経済成長を目指していく上でも大きな障害となる」と規制緩和を主張しています。規制緩和を求める経営トップからの巨額資金提供は、何らかの見返りを期待したものであれば問題です。