「しんぶん赤旗」

集団的自衛権そもそも―日本に攻撃なしで他国攻撃

2014/03/10 11:07 投稿

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米発案の「他衛権」

 安倍政権が行使容認を目指す「集団的自衛権」とは何でしょうか。

 人は自分の身を守る権利があるのと同様、国家も自らを守る権利が考えられています。戦争は違法だが、自国が攻撃を受けた場合の武力行使は違法ではない=これが「自衛権」です。「個別的自衛権」とも呼ばれます。

 一方、他国への攻撃を「自国への攻撃」とみなして反撃する権利とされる「集団的自衛権」は、この「自衛権」とは全く別物です。日本政府は1981年5月29日の政府答弁書で、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と規定しています。いわば「他衛権」だといわれています。第2次世界大戦後、米国が発案し、ソ連も賛成する中で国連憲章に書き込まれました。(別項)

 ■国連憲章51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

どう使われたのか

 集団的自衛権は、一見すると「友好国同士が助け合って不当な攻撃から身を守る」ようにも見えます。実態はまったく異なっていました。米ソなど軍事大国は、他国に軍事介入するときに「集団的自衛権」の行使を主張します。「同盟国から要請があった」「集団的自衛権を行使する」と称して、軍事介入、侵略戦争を繰り返してきました。(地図)

 それだけではありません。米ソは「集団自衛」を口実に軍事同盟網を張りめぐらせ、同盟国を侵略戦争に動員してきました。ベトナム戦争に動員された韓国は5千人近い死者を出しました。韓国兵によるベトナム住民虐殺事件も起きています。

 このような経緯を見ると、集団的自衛権とは、「集団で弱い者いじめをする権利」であるといえます。

歴代政府の立場は

 日本政府の立場は、「集団的自衛権は憲法上、行使できない」というものです。

 日本国憲法9条は、一切の戦力不保持を明記しています。しかし、日本は「自衛権」を有しており、「必要最小限度」の実力(自衛隊)を持つことは憲法違反ではない、との立場を取ってきました。

 ただ、自衛隊は「戦力」ではないので、「自衛」ではない戦争に参加できない、それゆえ、「他国への攻撃」に対処することを建前とする集団的自衛権の行使は「憲法上、許されない」との立場を取ってきたのです。

アフガンでは死者

 日本政府が集団的自衛権を行使すればどうなるのでしょうか。

 日本は自国への攻撃を受けていなくても、同盟国である米国の要請があれば、海外で武力行使できることになります。安倍晋三首相も日本共産党の小池晃議員の追及に「言葉の定義はそうだ」(4日の参院予算委員会)と認めました。まさに「海外で戦争する国」です。

 2001年9月に、9・11テロ事件のあった米国が、アフガニスタンを軍事攻撃する際、欧米諸国がつくる軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)は「集団的自衛権の発動」を発表してこれに参戦しました。NATO加盟の英国は、米国と一緒にアフガンを空爆し、アフガン人多数を殺害し、英兵447人を失っています。

 自民党の石破茂幹事長は「日本の集団的自衛権の行使が可能になっていたならば、あの戦いに自衛隊が参加した可能性はゼロではない」といっています。

 戦後、自衛隊は1人の死者も出さず、1人の外国人も殺しませんでした。日本は「殺し、殺される」道に踏み込むのかどうかの岐路に立っています。

「アジア版NATO」石破幹事長言うが

 「将来的にはアジア版の北大西洋条約機構(NATO)が必要だ」。自民党の石破茂幹事長はこう述べ、中国の軍事力増強の抑止力とする考えを示しました。日本が集団的自衛権の行使を可能にし、米国や他の同盟国とのネットワークをつくろうという考えです。

 これは米国の肩代わりをしてアジア諸国に殴りこむ考えを示したものであり、集団的自衛権の危険な本質をあらわにしています。

 ただ、米国は中国との「新しい大国間関係」を模索。封じ込め政策は否定しています。さらに、安倍政権の歴史認識問題で、米国の重要な同盟国である韓国との関係が悪化しています。多国間軍事同盟の条件は存在しておらず非現実的な議論といわざるをえません。

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