主張

後期高齢者医療

長生きが辛い制度はおかしい

 75歳以上の高齢者など約1500万人が加入する後期高齢者医療制度の保険料が4月から改定されます。保険料は現在、都道府県ごとの広域連合議会で決められています。東京都で平均保険料が年4000円以上アップするのをはじめ、全国の多くの地域で高齢者に負担増を強いる方向です。頼みの年金は今年も減らされます。年金から天引きなどされる保険料の引き上げは、消費税率の8%へのアップで新たな負担を強いられる高齢者に追い打ちをかけるものです。長生きした人たちの暮らしを脅かす負担増は許されません。

またも保険料アップ

 後期高齢者医療制度は2008年4月、自民・公明政権が「医療構造改革」の柱として導入しました。75歳以上の人は、それまで加入していた健保や国保など公的医療保険を強制的に脱退させられ、別枠の医療保険制度に囲い込まれました。年齢で区別・差別する、世界でも異例の“高齢者いじめ”の医療の仕組みです。

 制度の導入時、厚生労働省の担当幹部は、“医療費が際限なく上がる痛みを、後期高齢者が自らの痛みで感じてもらう”と明言しました。75歳以上の人口と医療費が増えれば増えるほど、保険料にはね返る仕組みだからです。

 2年に1度行われ、今度で3度目となる4月からの保険料改定では、75歳以上にますます「痛み」をもたらす弊害が鮮明です。30以上の都県で平均保険料がアップするといわれています。前回据え置いた県でも今回引き上げに踏み切るところもあります。

 住民運動などによって、都道府県によっては「財政安定化基金」を活用して保険料を据え置いたり、減額したりするところも生まれています。しかし、地方自治体の努力だけでは、保険料高騰を抑えるには限界があります。「負担増か、医療費を使うことを我慢するか」という二者択一を高齢者に迫る制度の仕組み自体をあらためなければ、根本的な解決はできません。

 高い保険料は負担能力を超えつつあります。保険料を払えずに滞納した75歳以上は、約25万人にのぼります。正規の保険証ではなく、有効期間が短い短期保険証を交付された人は2万3千人を超え、過去最多となりました。必要な医療が受けられない事態につながりかねない、高齢者の健康と命にかかわる問題です。

 保険料を滞納した人たちにたいする預貯金や資産差し押さえも増加の一途です。12年度の「滞納処分」の人数は2800人以上に達しました。わずかな貯金まで差し押さえられた事例も各地で問題になっています。高齢者の生存にかかわる、過酷な差し押さえを行うことはあってはなりません。

年齢差別は廃止を

 政府は後期高齢者医療制度について「十分定着している」などと温存を狙いますが、とんでもないことです。問題だらけの差別的な制度はすみやかに廃止し、以前の老人保健制度に戻すべきです。

 長生きした人たちに辛(つら)い思いをさせる医療制度は、全ての世代にとって不幸です。消費税増税が「社会保障充実のため」という口実はもはや成り立ちません。大企業や大資産家に応分の負担を求め必要な財源を確保し、安心して長生きできる社会保障の再生・拡充へ転換することが急がれます。