集団的自衛権行使の容認に向け、「最高責任者は私だ」「閣議決定してから(国会で)議論」と、憲法解釈変更を独断で行おうとする安倍晋三首相の手法に対し、護憲・改憲の立場を超えて内外から反対の声が沸き起こっています。憲法によって国家権力を縛る立憲主義を守れ、との世論の急速な広がりです。
与党内から
「立憲国としてとても考えられない」「いまの内閣の歩んでいる道は非常に危険だ」
安倍首相の姿勢に自民党幹事長経験者、元衆院議長をはじめ、同党総務会でも「閣議決定で(憲法解釈を)変更できるなら、一晩で変えられることになる」との批判が噴出しています。与党・公明党の漆原良夫国対委員長も「到底賛成できない」とメルマガで非難しています。
自民党中堅議員の一人は「戦争を知らない世代の『右』が、勢いでやってしまうのは危ないし、よくない。ブレーキが必要だ」と語ります。同党憲法改正推進本部の関係者の一人も「内閣で決めていいことなら憲法改正など必要ないということになる。(首相の)先走りに不満は強い」と自民党内の空気を説明します。
立憲主義を真っ向から否定する安倍発言に噴出する批判。法政大学大原社会問題研究所の五十嵐仁教授は「保守や改憲論者でも、民主主義や憲法とはどういうものであるべきかという常識ぐらいは持っています。それをまったく理解していない安倍首相の異常さが際だっており、それへの驚きもあるのでしょう」とみます。
同時に五十嵐教授は、憲法改定手続きを緩和する96条改定論をめぐってこの間「立憲主義とは何か」について一定の議論の積み重ねができてきたことを指摘。「96条改憲論は、それなりに手続きを踏んで明文改憲をやろうというものでしたが、今回の場合は、“オレは選挙で選ばれたんだから、思うとおりやらせてもらう。イヤなら次の選挙で落とせばいい”という独裁的なやり方で、裏口入学どころか、裏口すらぶっ壊すようなものです。多くの人が批判するのは当然のこと」と語ります。
海外メディア
批判は海外メディアからも。米紙ニューヨーク・タイムズ19日付社説は「立法主義の観点からは、正道を外れた見解」であり、「法の支配そのものに挑戦」するものだと報じています。
小泉内閣時代に内閣法制局長官を務めた阪田雅裕氏は、超党派議員と市民らの勉強会(20日)で、改憲が必要かどうかの立場の違いを超え「立憲主義、法治国家という観点から共闘していかなければいけません」と呼びかけています。
全国・地方紙 社説で批判
「聞き流せぬ首相の答弁」(「朝日」)、「立憲主義を軽視する発言」(西日本新聞)
集団的自衛権行使容認に向けた安倍晋三首相の解釈改憲発言について全国紙・地方紙が批判の社説を掲げています。
基本理念までも
「朝日」15日付は、安倍首相が選挙で勝ちさえすれば思いのまま憲法解釈を変更できるかのように発言したことは「民主主義をはき違えている」と述べ、「一連の答弁から浮かび上がるのは、憲法による権力への制約から逃れようとする首相の姿勢だ」と立憲主義否定論を批判しています。
解釈改憲を閣議決定し、その後国会審議にはかるとした首相答弁についても、「行政の意志決定手続きに過ぎない閣議だけで、憲法の基本理念部分まで解釈を変更していいのか」(京都新聞21日付)、「国会の議論を後回しにする手法は大いに問題だ。…憲法が権力の暴走を縛る『立憲主義』に反している」(神戸新聞22日付)、「憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」(北海道新聞22日付)と表明しています。
まるで裏口突破
立憲主義を否定する暴走ととらえ、「首相は、特定秘密保護法の成立時のように、強引な手法を繰り出す」(愛媛新聞24日付)、「歴代の自民党政権は正攻法で改憲を目指してきた。ところが安倍首相は、改憲が思うように運ばないから、閣議決定を先行させて解釈改憲を既成事実化することで打開しようとしている。まるで裏口突破だ」(東奥日報23日付)と痛烈な論調です。
また解釈変更が強行されれば、「憲法はもはや憲法でなくなる。極めて危うい発想だ」(沖縄タイムス23日付)、「自衛隊が海外に出掛けて武力を行使できるようになる。憲法による歯止めをなくす事実上の改憲だ」(信濃毎日新聞21日付)と危機感を示し、「国民を戦争ができる国へ導く集団的自衛権の行使容認の憲法解釈の変更は不要だ」(琉球新報23日付)と主張しています。
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