主張
生活保護の申請
生存権を侵害しない対応こそ
親族による扶養義務の強化などを盛り込んだ改悪生活保護法が昨年末に成立したことから、生活保護がさらに受けにくくなるという不安が広がっています。改悪法成立後、申請者の意向に反して親族に扶養義務照会が行われそうになったため、申請を断念したケースもあります。このような福祉事務所の対応は、申請権を侵害するものであり、「改定後も、いままでと運用は変わらない」とした政府の国会答弁にも反します。違法な窓口対応を許さない世論と運動を強めることが急がれます。
改悪実施への歯止め
昨年12月の国会で自民、公明などが強行した改悪生活保護法(7月実施)は、生活保護費の抑制・削減を狙ったものです。いままで口頭での保護申請を認めていたのに、文書申請と書類添付を原則にする条文を新設したほか、申請者の親族に扶養義務を迫るため、親族の収入や資産の調査を福祉事務所が行なえる仕組みを盛り込むなど、生活保護から申請者を遠ざけ、締め出す“水際作戦”の強化・徹底をめざした大改悪でした。
生活保護費の増加を抑えるため全国各地で、違法な“水際作戦”は以前から横行していました。法改悪によって「違法を合法化」するのが政府の狙いだったのです。
しかし、国民世論は、こんな乱暴なやり方を許そうとしませんでした。生活困窮者を支援する市民や弁護士、研究者らが改悪を許さない粘り強い運動を続け、世論を大きく広げました。
国会では日本共産党議員などのたびかさなる追及で、法律が改悪された後も、文書申請でなく口頭でも保護申請を認めることや、親族への扶養義務の照会をしなくても保護が受けられることを、政府に繰り返し認めさせたのです。
全国436福祉事務所で使用していた、親族の扶養義務を保護の「前提」にすると記した文書についても、政府に「不適切」と認めさせ、改めさせました。
法改悪の不当さが浮き彫りになるなかで、参院厚生労働委員会が改悪法採決の際、「『水際作戦』はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底する」とする付帯決議をしました。政府の暴走にたいする“歯止め”です。
昨年末行われた、改悪法についての説明会で、厚労省は、福祉事務所や自治体担当者にたいして、親族の扶養義務強化によって、支援が必要な人の保護が受けられなくなることがないように、などと徹底していました。
ところが実際には、全国各地の福祉事務所で、政府答弁や厚労省の説明に反する不適切で違法な窓口対応が行われている例が少なくありません。関係がこじれている兄弟へ扶養義務の照会が出されそうになって申請を断念した人や、「別の制度をまず使ってください」と申請すら認められない人などの相談が生活困窮者の支援団体などに寄せられています。厚労省は、違法な窓口対応の実態を調査し、是正指導を強めるべきです。
暮らしを守る政治こそ
安倍晋三政権の生活保護費削減に1万件を超える審査請求が始まるなど怒りは強まっています。改悪法の“先取り”を許さず、生存権を保障する憲法25条を具体化した生活保護が本来の役割を果たせるよう、再生・充実させるたたかいがますます重要です。