「政府としてコメントしない」「(追悼文を)読んでいないのだから答えようがない」「経営委員としてお願いした以上はお任せをしている」。NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長をはじめ同経営委員の百田尚樹(ひゃくたなおき)、長谷川三千子両氏の暴言問題の見解について、安倍晋三首相が述べた国会答弁です。
会長就任会見で、旧日本軍の「慰安婦」問題について「戦争しているどこの国にもあった」と言い放った籾井氏。東京都知事選候補の応援で「南京大虐殺はなかった」などと特異な歴史観を展開した百田氏。そして、拳銃自殺した右翼団体元幹部を礼賛する追悼文を発表していた長谷川氏は、そのなかで日本国憲法も否定しています。日本の過去の侵略戦争・植民地支配を肯定・美化するこれら歴史逆行の暴言に国内外から批判が巻き起こっているにもかかわらず、これをかばい続ける安倍政権の姿勢は国際的孤立をいっそうまねくものです。
一方、菅義偉官房長官は5日の記者会見で、長谷川氏の追悼文について「経営委員の思想表現の自由は妨げられない。放送法に違反するものではない」と擁護しました。
しかし、放送法31条は経営委員の資格として「公共の福祉に関し公正な判断ができる」者と定めています。史実をゆがめ、日本国憲法の国民主権原理を真っ向から否定する発言をする人物が「公正な判断」をできるでしょうか。籾井、百田、長谷川各氏の暴言を「問題なし」とする態度こそ問題です。
そもそも、百田、長谷川両氏をNHK経営委員に任命したのは安倍政権です。そうした人物で構成する経営委員会で会長に選ばれたのが籾井氏です。
昨年10月に安倍政権が百田、長谷川両氏を含む5人の経営委員国会同意人事案を示した際、菅官房長官は「首相自らが信頼し評価している人にお願いするのは当然のことだ」(昨年10月25日の記者会見)と述べ、安倍首相の意に沿う人選だったと認めていました。
安倍首相は、「国際的に侵略の定義は定まっていない」などとして、「慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認めた「河野官房長官談話」(1993年)や、日本による植民地支配や侵略について反省とおわびを表明した「村山首相談話」(95年)を攻撃してきました。
籾井、百田、長谷川各氏をかばう根本には、こうした安倍政権の特異な憲法敵視と歴史観があります。
(中祖寅一)
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