NHK経営委員の作家・百田尚樹氏は3日、都知事選候補者・田母神俊雄元航空幕僚長の応援演説に立ち、特異な歴史観・憲法観を展開しました。演説は田母神候補を声高に応援するだけでなく、「南京大虐殺はなかった」「東京裁判は米軍が大虐殺をごまかすためだった」とか、1941年の日本軍の真珠湾攻撃を合理化するなど、歴史を偽り、日本の侵略戦争を正当化する内容でした。
これに対しては「放送に携わるものが公の場で何を言ってもいいのか」との批判が起きています。
百田氏はこれに逆上、自身のツイッターに「アホか!不偏不党は放送に関してのみ。個人の思想信条は認められて当然。これがダメというなら、NHK経営委員などいつでも辞めてやる!」と書き込んでいます。
たしかに放送法も、経営委員の服務に関する準則も、経営委員の政治的行動を禁じてはいません。しかし特定候補の応援に立って特異な歴史観を公言し、それを批判されると口汚くののしる―こんな人物にNHK経営委員の資格があるのでしょうか。
不偏不党な立場
放送法が経営委員についてどう定めているのか、百田氏は読み直すべきでしょう。経営委員は「放送が公正、不偏不党な立場に立って…健全な民主主義の発達に資する」ことを「自覚」するよう求めています。
経営委員はNHKの番組内容に干渉することはできません。しかし会長の任免、事業の内容、番組編集の計画、予算の承認、役員の監督と大きな権限を持っています。だからこそ、放送法は経営委員の任命について「公共の福祉に対して公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」としています。
経営委員は、放送法第1条にいう「放送の不偏不党、真実及び自律」を保証するために存在します。NHKの放送ガイドラインは「報道の不偏不党」を守ることを強調し、「放送とは直接関係のない業務にあたっても、この立場は揺るがない」と定めています。経営委員とて例外ではありません。
安倍政権の責任
就任会見で数々の暴言を吐いた籾井(もみい)勝人NHK新会長に対して、経営委員は任命権者、視聴者の代表としてこの発言を検証し、罷免も含めた判断を下す責任がありました。しかし、1月28日の経営委員会では進退に関わる意見は出ませんでした。そればかりか百田氏はツイッターで「籾井会長を非難する経営委員は誰なのかを、この目で確かめてやる」と他の経営委員を恫喝(どうかつ)するような書きこみをしています。
百田氏が経営委員であることは、もはやNHKの不幸、視聴者の不幸です。氏の言葉を借りるなら「辞めて」もらうのが多くの国民の声ではないでしょうか。
また、こんな人物を経営委員としてNHKに送り込み、異常な言動を繰り返しても「個人的に行ったこと」と擁護する安倍政権の責任が厳しく問われます。(荻野谷正博)
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