NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長が旧日本軍の「慰安婦」問題について、「戦争をしているどこの国にもあった」などと発言したことに対し、国内外から批判と怒りの声が広がっています。菅義偉官房長官は27日、「個人として発言したと承知している」などとかばい、辞任の必要はないとの認識を示しましたが、「辞任すべきだ」「安倍内閣の責任も重大だ」との声があがっています。
「橋下徹・大阪市長の“『慰安婦』は必要だった”という発言の教訓がまったくいかされていない」と話すのは、ジャーナリストで、「戦争と女性への暴力」リサーチアクション・センター共同代表の西野瑠美子さん。長年、被害女性たちに寄り添い、問題解決にとりくんできました。
「過去の侵略戦争を正当化したい思いや、アジアへの蔑視が、どこかにあるのだと思います。NHKは、日本軍『慰安婦』を扱った番組『ETV2001~問われる戦時性暴力』を放送当日に修正する番組改ざんを行いました。これは自民党の圧力によるものでした。NHKは過去の過ちをもう一度肝に銘じてほしい。会長の発言は撤回ですむものではなく、即刻辞任すべきです」と話します。
日本共産党本部にも「NHK会長の『慰安婦』発言はけしからん。NHKに抗議の電話をした」(新潟県長岡市の女性)、「NHKという公共放送のトップとしての資質が問われる問題」(東京在住の50歳の男性)など、多数の電話やメールが寄せられました。
海外では、韓国外務省が「歴史的事実をゆがめ、でたらめな主張を行ったことは嘆かわしい」と表明。中国外務省の報道局長も「歴史を逆行させる日本の指導者の行為と同じ流れをくむものだ」と批判しました。また、27日付の韓国紙が「歴史認識も品格もなく、事実確認もまともにされていない妄言」(韓国日報社説)などと一斉に批判。米英のメディアも「日本の公共放送の新会長が政府の味方に?」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版)などと政権寄りの姿勢を指摘しています。
市民団体の「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が27日、NHK経営委員会に対して籾井氏の解任を求める申し入れ書を提出したのをはじめ、日本平和委員会、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会、新日本婦人の会など平和・女性団体が、「戦後政治の原点である侵略戦争への反省と政治的中立性を欠くもの」などとして、辞職を求める声明を相次いで発表しました。
政府の代弁者か 山下書記局長
日本共産党の山下芳生書記局長は27日、国会内で記者会見し、籾井勝人NHK会長の発言について「日本軍の関与を認めて謝罪した河野洋平官房長官談話など政府の立場と異なり、歴史的事実にも反するものだ。公共放送の会長としての資格はないといわねばならない重大な発言だ」と厳しく批判、国会で発言の真意をただす必要性を指摘しました。
山下氏は「放送法の1条2項には『放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する』と明記されている。この放送法の趣旨からみても発言は不適切だ」と強調。また、籾井氏が会見で「NHK組織のボルトとナットをもう一回締め直す」と発言したことにふれ、「会長の誤った歴史認識に基づいて締め直されたら、NHK全体が放送法の趣旨からはずれた組織になってしまうと大変危惧をする」と警鐘を鳴らしました。
山下氏はさらに、籾井氏が、国際放送では明確に日本の立場、政府の立場を主張するのは当然だとして「政府が右ということを左というわけにはいかない」と言い放ったことを批判。「公共放送というよりも政府の代弁者であり、国営放送的な発想だ。この点でも会長の資格が問われる」と指摘。BBC(英国放送協会)も、政府の見解を批判的に紹介する報道を国際放送で行っている事実を示し、「そういう放送をすることが、公共放送、放送ジャーナリズムの信頼と権威を高めることになる」と語りました。
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