被災者ら「予算を返せ」
復興予算を流用した国の企業向け補助金「国内立地推進事業費補助金」の交付先企業が、違法の疑いがある政治献金をしていた問題で、安倍晋三首相と4閣僚らも2012年に献金を受けていたことが新たに明らかになりました。被災者からは、「被災地のためのお金を返せ」との声が上がっています。
4閣僚にも
この問題をめぐっては、自民党の政治資金団体「国民政治協会」が12年に、トヨタ、キヤノン、東芝など補助金交付先の33社から計2億3千万円超の献金を禁止期間内に受けたことが、本紙の調べで明らかになっています(19日付)。
国の補助金の交付決定から1年以内の寄付は政治資金規正法で原則禁止されています。
安倍首相は12年、自身が代表の自民党山口県第四選挙区支部に、補助金交付先の宇部興産(東京都港区)から50万円、協和発酵キリン(同千代田区)から6万円の寄付を禁止期間内に受けました。
さらに資金管理団体「晋和会」が富士フイルム(同港区)から100万円のパーティー券購入を受けています。
閣僚ではほかに、谷垣禎一法相が12万円、岸田文雄外相が24万円、林芳正農水相が50万円、茂木敏充経産相が24万円を、補助金交付先から禁止期間内にそれぞれ自身が代表の党支部で受けています。
また、高村正彦自民党副総裁が50万円、西村康稔内閣府副大臣が100万円、井上信治環境副大臣が12万円を党支部で受け、伊吹文明衆院議長が30万円を関連政党支部で受けていました。
問題の補助金など復興予算の被災地外への流用は、自民、民主、公明が3党協議で合意。自民党は補助金を推進し、別の補助金ともあわせて1兆円規模に増額するように民主党政権に求めていたことが分かっています。
3党協議の実務者だった自民党の加藤勝信内閣官房副長官は、トヨタグループのうちトヨタやアイシン精機など補助金交付先の5社から計25万円の寄付を受けました。
宮城県多賀城市の山王仮設住宅自治会前会長の千葉昭蔵さん(70)は、「仮設で暮らす方々は、いまも困っている。復興予算を横取りされて、泣きを見るのは被災者だ。流用先から政治家に献金なんて、とても許せない」と話しています。
復興予算 東日本大震災の復興のために一般予算と別に計上される予算。当初5年間で25兆円にのぼるとされます。うち10.5兆円を復興増税でまかなうとし、25年間にわたって所得税を税額の2.1%上乗せするなどの国民負担を求めます。一方で安倍政権は、企業に対する復興特別法人税を1年前倒しで今年度末に廃止すると、5日に閣議決定しました。