主張
診療報酬改定
医療の安全・安心を壊すな
公的医療保険の医療サービスの“価格”である診療報酬を、来年4月から改定する議論が本格化しています。社会保障費の大幅削減を狙う財界や財務省は、診療報酬総額を削減するマイナス改定を強く求めています。厚生労働省は、医療費抑制のため、入院患者に手厚い看護体制をとる病院を減らす方針などを打ち出しています。安心・安全の医療の拡充を求める国民の願いに反する動きです。医療従事者と国民に犠牲を強いるマイナス改定ではなく、本格的な引き上げに転じるべきです。
「医療崩壊」加速の危険
医療機関に公的保険財政から支払われる診療報酬(患者は一部を窓口負担)は2年に1度改定されます。総額は内閣が12月中に閣議決定し、サービスや薬の具体的な“価格”は、厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)が来年初めに決める段取りです。
第2次安倍晋三政権下初の改定では、消費税大増税と社会保障の「一体改悪」路線のもとで、政府・財界から「マイナス改定」の大合唱が巻き起こっています。経済財政諮問会議では、安倍首相自身が診療報酬の「合理化・効率化に最大限取り組む」とマイナス改定へ強い意欲を表明しました。
財務省や経団連などが繰り返す“賃金や企業売り上げなどに比べ診療報酬は高すぎる”などという主張は、事実をゆがめています。
2000年代、自公政権の小泉純一郎内閣が進めた「構造改革」路線は、社会保障費「毎年2200億円削減」政策を強行し、診療報酬は4回連続のマイナス改定となりました。その結果、保険診療を行う医療機関はどこもきびしい経営状態に追い込まれました。
産科医不足による「お産難民」の多発、救急患者の受け入れ困難病院の続発、地域医療の疲弊などの「医療崩壊」は、国民の命と健康を危機にさらしたのです。民主党政権下の2回の診療報酬改定も、事態は改善されることもなく実質的にはゼロ・マイナス改定が続きました。今回もマイナス改定を続けることになれば、「構造改革」路線で疲弊したまま、修復していない医療現場の深刻な傷口をさらに広げ、「医療崩壊」を再び加速させる結果にしかなりません。
厚労省が検討している入院患者7人に看護師1人配置という手厚い看護体制をとる病院を減らす方針は、逆行そのものです。手厚い看護師配置は、医師不足とならんで大問題になった看護師不足・過重労働の解消を求める世論と運動によって実現したものです。それを診療報酬による政策誘導で強引に削減することは、再び医療現場に困難をもたらします。「平均入院日数」を短くする病院を優遇する改定も狙われています。患者追い出しに拍車をかけ、行き場を失う「医療難民」を続発させる報酬改定など絶対に許されません。
窓口負担の軽減急げ
消費税率を8%にする予定の来年4月に診療報酬引き下げを強行すること自体、“消費税増税は社会保障のため”という口実が成り立たないことを示すものです。大企業への応分の負担など消費税増税に頼らない財源を確保し、診療報酬引き上げをはじめとする社会保障の拡充に踏み出すときです。
診療報酬引き上げが国民の暮らしを圧迫しないよう、窓口負担の軽減の実施が急がれます。
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