安倍政権決定 原発頼み変わらず
安倍晋三政権は15日、地球温暖化対策に関する閣僚会合を開き、2020年までの温室効果ガス排出量を05年比で3・8%削減する新たな目標を決定しました。京都議定書の基準年である1990年比に直すと約3%増になります。「増加目標」を掲げるのは、世界第5位の大量排出国としての責任を投げ捨てるものです。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、産業革命前に比べ気温上昇を2度以内に抑えこまなければ、地球環境と人類の生存を脅かす事態が生じると警告しています。温暖化を防ぐため50年までに温室効果ガスを全世界で90年比50%以下に、先進国は80%以下にすることが必要だとしています。
新目標は、民主党政権下で定められた90年比25%減の目標を放棄したうえで、基準年まで変え「削減」を取り繕ったにすぎません。
目標は、森林吸収分として約3%減を見込んでおり、これを除くと実際には05年比でも横ばいです。一方で、原発停止を理由に、発電部門で20・3%、産業部門で5・4%の排出増を見込みました。再生可能エネルギーの普及については触れていません。
石原伸晃環境相は閣議後の会見で「原発の稼働がゼロだから誰が計算してもこうなる」と発言。原発再稼働を削減目標見直しの前提としました。
新目標は、環境技術革新に、今後5年間で官民合わせ1100億ドル(約11兆円)の国内投資を目指すとしています。公的資金で原発輸出を促進することも盛り込みました。政府は、ポーランドで開会中の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)で目標を説明する方針です。
NGO抗議次つぎ
政府の発表した「削減」目標について、環境団体は次々と抗議声明を発表しました。
国際環境NGOのFoEJapanは「他の先進国、途上国の排出削減・抑制努力に冷や水を浴びせ、交渉を後退させる先例」と批判しています。気候ネットワークは、「原発ゼロは排出を増やす理由にならない」として、再生可能エネルギー導入と省エネルギー強化などで温室効果ガスの大幅削減は可能と表明。
市民団体でつくるeシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、「気候変動の被害は遠い未来のことではない」と野心的な目標へ引き上げることを強く求めています。
京都議定書 1997年に京都市で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議で採択された気候変動枠組条約に関する議定書のことです。先進国における削減率を1990年を基準として各国別に定め、目標値を達成することが定められました。
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