秘密保護法案には“秘密”をあつかっていい人物かどうかを公務員、民間人を問わず身辺調査をする「適性評価制度」が盛り込まれています。本紙が入手した防衛省・自衛隊の内部資料からは、調査対象者のプライバシーが侵害されるだけでなく、一見無関係の多くの国民が知らぬ間に個人情報を調べられるという恐ろしい実態が浮かび上がってきました。
「あなたの交友関係の中で、あなたのことをよく知っている人を記入すること。関係については、『高校同級生』『元上司』等具体的な表現(とすること)」
「関係は『高校時代の同級生』『釣りクラブの仲間』のように記入する」
「政治、経済等の団体及び出身学校関係の親睦団体からスポーツクラブその他あらゆるものについて、現在過去を問わず記入する」
このように、ありとあらゆる人間関係を聞き出そうとしているのは、防衛省・自衛隊の「身上明細書」と、その記入方法を記したマニュアル文書です。
この文書は、秘密保護法を先取りするものとして、2009年から国の行政機関が行っている「秘密取扱者適格性確認制度」と呼ばれる職員を選別する制度で使われています。
身上明細書は、職員に19項目の個人情報を書かせて、身辺調査の基礎資料となります。
明細書は、本人だけでなく親族や同居人、友人、外国人交友者の名前や性別、住所、職業、勤務先などを書き込むもの。一人の調査対象から、友人、知人など膨大な数の一般人の個人情報を防衛省が吸い上げるものとなっています。
関係者によると、明細書で個人情報の“過少申告”や“申告漏れ”がないか、自衛隊情報保全隊がチェックし、記入もれを防いでいるといいます。
しかも、マニュアル文書は「記入に際しては、本人に問い合わせて確認してはならない」と指示。知らぬ間に、自分の情報が防衛省に収集される危険が誰にでもありえるのです。
秘密保護法案では、法案の骨格づくりをした政府の有識者会議が、この身辺調査制度を法案の参考例にしています。
実際に法案で掲げられた七つの調査項目は、現行の身上明細書にある調査内容と同じです。
根拠法のないもとでも、この身辺調査で、少なくとも6万4380人(昨年末時点)が調べられたことがわかっています。
秘密保護法ができると、国家公務員のみならず、“秘密”の取り扱い業務をする民間業者や研究者にまで「適性評価」の対象が広がります。この対象から、さらに家族や友人の個人情報の収集が行われることになります。