主張
集団的自衛権行使
立憲主義否定する解釈改憲だ
安倍晋三首相の諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)が7カ月ぶりに審議を再開しました。これまでの政権が憲法上許されないとしてきた「集団的自衛権」の行使に向け議論します。
日本が攻撃されてもいないのにアメリカなどのため武力を行使する「集団的自衛権」は、憲法をふみにじり、日本を「戦争への道」に引き込むものです。安保法制懇の報告をもとに憲法解釈の変更だけで「集団的自衛権」の行使を認めようというのは、まさに立憲主義を踏みにじるものです。
全面的見直しの議論
安倍首相は審議を再開した安保法制懇でのあいさつ(17日)で、「憲法制定以来の変化を重視し、新しい時代にふさわしい憲法解釈のあり方をさらに検討する基礎となること」を求めました。
安保法制懇の議論の方向はきわめて重大です。安保法制懇の座長代理の北岡伸一国際大学学長は、「集団的自衛権を部分的に認めることはあり得ない」とのべています。「集団的自衛権」を全面的に認めようとしているのは明らかであり、安保法制懇の議論の進行は見過ごしにできないものです。
かつて第1次安倍政権時代に安保法制懇が検討したのは、アメリカに向かうミサイルが日本上空を通過する場合など、四つのケースに限って「集団的自衛権」行使の是非を検討するというものでした。ところが今回の懇談会は、「集団的自衛権」の行使全体について憲法解釈を変え、認めていこうという方向です。こうした重大な変更を、解釈を変えるだけで実行できるようにしようというのはきわめて乱暴です。
もともと日本の憲法は戦争を放棄し、武力を持たず、他国との間で戦争しない(交戦権の否認)ことを原則にしています。歴代政府はこうした憲法の原則を踏みにじって再武装やアメリカとの軍事協力を進めてきましたが、それでも自衛隊は「自衛」のための「必要最小限」の武力だといい、交戦権は認めてきませんでした。「集団的自衛権」の行使はこうした原則を完全に踏みにじり、日本が「日本を守るため」でなく、アメリカなどのため外国での戦争に参加することになるものです。
憲法解釈の変更だけで、「集団的自衛権」の行使に突き進んでいこうという安倍首相の企てが、民主主義の土台である立憲主義を根底から覆すものなのは明らかです。国家による権力の乱用から国民を守るというのが立憲主義です。憲法96条が各議院の3分の2の賛成がなければ国会は憲法改正を発議できないようにしているのもそのためです。お気に入りの有識者を集めた協議で憲法解釈を変えれば何でもできるというのはまさに立憲主義の否定であり、絶対に許されるものではありません。
9条守り抜くことこそ
国民の多数は安倍首相の企てに反対です。新聞各社の最近の世論調査でも、50%をこえる国民が「集団的自衛権」行使に反対で、賛成は30%あまりにすぎません。国民の圧倒的多数は憲法9条を守ることを願っているのです。
安倍首相は国民多数の意思を尊重するなら、憲法解釈の変更による「集団的自衛権」行使容認の企てをきっぱり断念すべきです。
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