運営に国の介入許す

 不祥事が相次いだ全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長(62)は30日、一連の不祥事の責任を取り、8月中に辞任することを表明しました。

 全柔連の執行部がようやく辞任を決めたものの、その時期も動機も手続きも“禍根”を残すものとなってしまいました。

 女子選手への暴力的な指導、助成金の不適切な使用など、相次ぐ不祥事にまみれた全柔連。その間、みずから設置した二つの第三者委員会からは、会長ら執行部の責任を指摘されていました。

 しかし、上村会長は4月に一度は辞任をほのめかしながら前言を翻し、10月まで辞めないといいだすありさまでした。その中で決定打は、公益法人を監督する内閣府からの是正勧告でした。

 23日の勧告では、8月末まで「責任の所在を明らかにし、体制を再構築すること」と記されました。臨時理事会で執行部5人の辞任を提案した上村会長も、「(勧告が)辞任を決める一番大きなポイントになった」と言わざるを得ませんでした。

 臨時理事会に続いて行われた評議員会では、即時解任の動議が出たものの、理事23人の解任は否決されてしまいました。

 ある評議員は、「(会長は)国民から見たら失格のらく印を押されているのに、柔道界は世間の常識が通らない。悲しい現実」と嘆きました。最後まで自浄能力のなさが、浮き彫りになった形です。

 最も大きな問題は全柔連が、運営に国の介入を許してしまった点です。

 スポーツ団体は自主、自立的に運営することが基本です。しかし、社会的に不正常なことを続けたことで、国の介入を許し、スポーツ団体の自治がゆがめられました。国の介入によりボイコットを強いられたモスクワ五輪の例を出すまでもなく、それはスポーツ団体の存在意義を否定することにつながりかねません。

 今回の一件が、あしき前例となれば、スポーツ界は大きな代償を払うことになります。 (和泉民郎)