主張
最低賃金改定
政府は大幅引き上げの決断を
ことしの最低賃金をいくらにするか、国としての「目安」を決める審議が厚生労働省の中央最低賃金審議会「目安」小委員会でおこなわれています。現在の平均時給749円という最低賃金は、まともに生活できない低水準です。働いても働いても貧困から抜け出せない、年収200万円以下の働く貧困層(ワーキングプア)が1000万人を超えている原因がここにあります。働く人のくらしを豊かにしてこそ経済もよくなります。政府と審議会は、まともに働けば生活ができる最低賃金に大幅アップを決断すべきです。
全国で1000円以上に
安倍晋三首相は参院選の最中、最低賃金について「10円以上の引き上げが可能だ」と語りました。「アベノミクス」による2%の物価上昇目標に見合った引き上げといわれていますが、それだと15円程度でしかなく、生活の苦しさは変わりません。
何よりも、この程度では最低賃金が生活保護の給付水準を下回っている、いわゆる「逆転現象」さえ解消されません。生活保護との整合性に配慮するという改定最低賃金法が2008年に施行されてから5年過ぎて、いまだに解消されない責任は政府と審議会にあります。しかも直近の厚労省の調査では、「逆転現象」が昨年度の6都道府県から11都道府県に拡大しています。差額は大きい順に北海道22円、東京都13円、広島県11円などとなっています。この解消は最低限の責任です。
同時に、この「逆転現象」には厚労省による計算方法のごまかしがあります。たとえば生活保護で免除されている税金、社会保険料分を比較するさい、税と保険負担がもっとも低い沖縄県の数字をつかっています。労働時間も、全国平均を上回る長時間に設定するなど、最低賃金が生活保護給付額より大きくなるように小細工しています。こういう不当なやり方を改めて公平に計算すれば、47都道府県すべて「逆転」しており、解消のためには全国すべて時給1000円以上でなければなりません。
いま世界の主要国は最低賃金が1000円以上です。企業の「支払い能力」を優先する日本と違って、働くものに最低生活を保障する「生計費」を決定基準にし、多くが全国一律制度で、地域間格差をなくしています。
政府に求められているのは、企業の利益優先で、生計が維持できない水準に最低賃金をとどめてきた姿勢を改めることです。そして最低賃金の引き上げによる影響が大きい中小企業を支援する抜本的な対策をとりつつ、すみやかに時給1000円にすることです。
政府あげて中小企業支援
厚労省の最低賃金にかかわる13年度の中小企業支援予算はわずか26・5億円です。しかも使い勝手が悪く減額傾向です。フランスが2兆円以上の社会保険料負担軽減を実施するなど各国のとりくみに比べてきわめて貧弱です。いまこそ日本も、1省庁のみみっちい単独事業というやり方でなく、最低賃金大幅アップに見合った中小企業減税など政府あげた対策をとるべきです。最低賃金の引き上げは、労働者全体の賃金水準を上げ、それが消費を増やし、商店街や企業が息を吹き返して景気が回復します。この方向に転換する決断が政府に求められています。
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