主張
生活保護費の削減
暮らしの土台に「大穴」許せぬ
自民・公明連立の安倍晋三政権が8月から、生活保護基準の大幅引き下げ(保護費削減)を強行しようとしています。基準引き下げは、受給者の暮らしを直撃するだけではありません。小中学生のいる家庭を支える就学援助費や、最低賃金額など国民生活を支えるさまざまな制度にも影響を及ぼす大問題です。安倍政権の経済政策「アベノミクス」で暮らしがいよいよ深刻になるなか、最低生活を守る「最後の安全網」まで容赦なく破壊する基準引き下げは許されません。
「非情な通知」に悲鳴
参院選が終わったとたん、全国各地の生活保護受給者のもとに保護費減額を知らせる「非情な通知」が届きはじめました。「生活必需品は値上げの連続なのに、どこを節約すればいいのか」。受給者の悲鳴と怒りの声が広がっています。
保護基準の引き下げは、安倍首相が政権復帰後、初めて成立させた2013年度予算に盛り込まれたものです。引き下げ実施を参院選後の8月にしたのは、今回の削減の規模も内容も、例のない過酷なもので受給者と国民に計り知れない打撃を与えるからです。
保護費を3年かけて総額670億円(6・5%)も削減したことは、現在の生活保護制度発足後一度もありません。減額されるのは受給世帯の9割以上にのぼり、人数が多い世帯ほど減額幅が拡大します。夫婦子ども2人世帯で月2万円もカットされるところまであります。先の通常国会で、全会一致で成立した子どもの貧困対策法の理念にさえ完全に逆行します。
今回減額される保護費(生活扶助費)は、食費や光熱水費などにあてられる受給者の日常生活をささえる、まさに“命の土台”です。すでに受給者は、「アベノミクス」による食料品の値上がりなどによって四苦八苦しています。きびしい猛暑のなかエアコンなしには熱中症の危険すらあるのに節約のために使わない世帯も少なくありません。ガス・水道の使用を少しでも減らそうと汗を流すシャワーを使うこともためらう受給者もいます。これ以上の“節約”を求めることは、健康と命を削れと迫るのに等しいものです。
保護基準は、就学援助の支給費や最低賃金額、住民税の非課税限度額の目安など、国民の暮らしにかかわる制度に連動しています。政府の「影響が及ばないようにする」などというごまかしも成り立ちません。就学援助の実施主体の地方自治体からは「影響はでる」という意見が続出しています。
基準引き下げによって、所得は変わらないのに就学援助から締め出され、新たに課税対象にされる国民が続出する危険が現実のものになっています。国民の最低生活を保障している制度に、容赦なく大穴を開ける保護基準引き下げにはなんの道理もありません。
国民の共同した反撃で
保護基準引き下げに続き、先の国会で廃案になった生活保護法改悪法案の強行を狙う安倍政権の姿勢は、暮らしを守ることを願う国民と相いれません。基準引き下げにたいして「憲法が保障する生存権を守れ」と全国各地で異議申し立てを行う動きが広がっています。生活保護改悪を突破口に社会保障大改悪を企てる安倍政権にたいして、国民の共同した反撃がいよいよ重要となっています。