主張
オバマ米政権
真価問われる2期目の船出
米国のオバマ大統領が政権2期目に乗り出します。再選を考えなくていい2期目は、独自性を発揮しやすいとされます。しかし、オバマ政権が対外政策をどう展開しようとするのかは不鮮明です。
アジアをはじめ中南米、アフリカでの新興国のめざましい発展と世界の多極化を背景にして、米国がその軍事力や経済力を頼んで世界を左右しようという時代はすでに終わっています。国連憲章に基づく国際協調が現代の秩序です。それをないがしろにする傾向が、オバマ政権の対外政策を不明確にしています。
国連憲章に基づく協調
1期目のオバマ政権は当初、グアンタナモ米軍基地のテロ容疑者収容施設の閉鎖、「核兵器のない世界」の追求、イスラム世界への和解呼びかけなど、新鮮な対外政策を打ち出しました。ブッシュ前政権がイラクへの侵略戦争などで追求した一国覇権主義が破綻に直面し、国際協調へと転換せざるを得ないことを映し出しました。
しかし、みるべき成果をあげていないばかりか、未臨界核実験の度重なる実施が示すように、公約に反した政策も進められました。アフガニスタンでは米軍を大規模投入して反政府武装勢力の掃討作戦を展開し、無人機を使用した特定対象者の殺害などの特殊作戦を遂行するなど、「オバマの戦争」が新たな批判を浴びました。
対外政策の重点をアジア太平洋地域に移すオバマ政権の戦略も、軍事同盟と軍事協力の強化、米国主導の経済のブロック化などにつながるもの、との批判を受けています。それは、東南アジアを中心に進められている地域共同の方向と相いれないものだからです。
2期目の船出にあたって政権の対外政策チームの交代が注目されています。失敗が明らかなイラク戦争の遂行に固執したブッシュ前政権を批判し、共和党では“ハト派”と目されるヘーゲル元上院議員を国防長官に指名しました。
一方では、アフガンなどで無人機によるテロ容疑者殺害を推進してきたブレナン大統領補佐官を中央情報局(CIA)長官に指名しました。「テロとの戦い」でビンラディン容疑者の殺害などに成果をあげたとされる特殊作戦を強める構えもみせています。
2014年末までにアフガンから米軍戦闘部隊を撤退させるとのオバマ大統領の公約も困難に直面しています。軍事対応を中心とする政策では、パキスタンを含む地域の安定は見込めません。オバマ政権は米国内の世論に押され、米軍全面撤退の検討を表明しましたが、展望は不明です。
米国は01年の同時テロ以来掲げてきた「テロとの戦い」を見直すべきです。軍事力でテロはなくせず、温床になっている貧困や不正義にこそ目を向けるべきです。
非暴力がもたらす成功
今年はリンカーン大統領が1863年に「奴隷解放宣言」に署名して150年です。就任式が行われる21日は、人種差別撤廃の公民権運動の指導者キング牧師の誕生記念日にあたります。非暴力で運動を成功に導いた牧師の言葉があります。「暴力の究極の弱点は、それが破壊しようとするもの自体を生み出してしまうところにある」。初のアフリカ系大統領であるオバマ氏には、その言葉を思い起こしてほしいものです。