主張
オバマの核提案
「核のない世界」先送りするな
オバマ米政権が核兵器の具体的な政策や軍事作戦の基本となる「核兵器運用指針」を策定しました。オバマ大統領の主張に沿って「核兵器への依存を減らす」と強調しています。しかし、指針は「核抑止力」の維持を主眼としており、核兵器を温存すると同時に、「抑止が破れた場合」の核兵器の使用も視野に入れています。
「抑止力」維持が主眼
オバマ大統領が「核兵器のない世界」をめざすと表明したプラハ演説から4年が過ぎました。同大統領は今月ベルリンで、配備する戦略核の上限を米ロ戦略兵器削減条約(新START)の1550発から、さらに3分の1削減しようとロシアに提案しました。
提案は指針と一体でつくられ、核大国としての「強力で信頼できる戦略抑止力」の維持を前提にしています。提案通りに減らしても、圧倒的な核戦力を仮想敵国の目標に向けている事態は変わりません。減らすという「3分の1」は軍事的にみても余分なのです。
しかも、指針は「技術的障害や地政学的変化によるリスクを回避する」ために「非配備の核兵器を十分に保有する」としています。「非配備」でもいつでも再配備でき、米ロが新提案で合意をみても、両国が保有する核兵器が実際に減るとは限りません。
こうした軍備管理方式による核兵器の漸減は廃絶につながらないばかりか、交渉は両国の戦力バランスをめぐって、廃絶の交渉より複雑で困難になりかねません。現に、ロシアは米国がミサイル防衛網を展開していることなどを理由に、提案を拒否する構えです。
主要な軍備管理での前進は米政権の4年の任期中に1度といいます。第1期オバマ政権が推進した新STARTも、実施完了にはなお5年かかります。オバマ政権最後となる可能性が強い今回の提案は、同大統領にとって「核兵器のない世界」への一歩であっても、現実には核兵器の廃絶を遠い未来の課題に追いやるものです。
指針が「一般市民の巻き添えを最小限にする」として、核戦争を想定していることも重大です。「核抑止」に有効性をもたせるには、核による反撃を公言することになります。「核抑止」というとき、指針は同盟国への「核の傘」も含めています。危険極まりないその議論は、唯一の被爆国である日本にも及んでいます。
日本共産党の志位和夫委員長は4年前、オバマ大統領に書簡を送りました。「核兵器のない世界」の構想を歓迎したうえで、実現は自らの「存命中にはできない」との大統領の表明に「同意できない」とし、「核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、国際交渉を開始するイニシアチブを発揮することを、強く要請する」と述べました。オバマ政権の核政策は、志位書簡の指摘の妥当性を浮き彫りにしています。
禁止・廃絶の交渉を
人類は核兵器と共存できず、核兵器は廃絶するしかありません。「核兵器のない世界」を実現するには、軍備管理でなく核兵器禁止・廃絶の交渉をこそ始めるべきです。国際社会はいま核兵器の非人道性に注目し、廃絶に向けたイニシアチブを強めています。
この国際世論をいっそう強め、核兵器廃絶の筋道を確かなものにすることが不可欠です。