参議院選挙の躍進めざして――日本共産党はいかにたたかうか
NHK党首インタビュー 志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長が9日、NHK日曜討論の党首インタビューで島田敏男解説委員の質問に答えた発言は以下の通りです。
アベノミクス
国民の所得を奪う政治から、国民の所得を増やす政治へ
島田敏男解説委員 よろしくお願いします。
志位和夫委員長 よろしくお願いします。
島田 まず、安倍内閣が進めている経済政策、それによる今の景気の現状についてどのようにご覧になっていますか?
志位 現在のデフレ不況の一番の問題というのは、国民の所得が長期にわたって落ち続けているというところにあります。ところが、率直にいって、アベノミクスには国民の所得を増やす「矢」が一本もない。国民の暮らしを壊す「毒矢」だらけです。
この間、「異次元の金融緩和」ということをやってきたわけですが、投機マネーによって円と株が乱高下して、結局、国民の暮らしに甚大な打撃をあたえたあげく、制御不能に陥りつつあります。
今度は、「成長戦略」だというのですが、中身をみてみますと、解雇の自由化、残業代ゼロなどの雇用のルールの破壊、さらにTPP(環太平洋連携協定)の推進と原発の再稼働。財界と大企業さえもうけさせればいいという中身です。
さらに、そこに消費税の大増税をかぶせようという。
そういう、国民の所得を奪う政治から、国民の所得を増やす政治への大転換が必要だと訴えていきたいと思います。
経済政策
「やるべきこと」と「やってはならないこと」
島田 共産党はどういう経済政策が重要だと、積極的に訴えていくのですか?
志位 「やるべきこと」は、大企業がいま抱えている260兆円におよぶ内部留保の一部を、賃上げと非正規社員の正社員化、あるいは中小企業の下請け代金の適正化、こういうものにあてていき、活用する(ということです)。内部留保の1%を活用しただけで、8割の大企業で月1万円の賃上げができますから、そういう方向にむけて経済界に働きかけていく政治の努力が必要だと思います。
「やってはならないこと」は消費税の増税です。これは(税率10%への増税で)13・5兆円の空前の増税になるわけで、これをやってしまいましたら、暮らしと経済を壊すだけではなくて、経済全体が落ち込みますと、税収も落ち込んで、結局、財政危機をひどくしますから、絶対に反対です。
選挙制度
小選挙区制をなくし、比例代表への抜本改革を
島田 国会は終盤国会。衆議院の1票の格差是正の「0増5減」の区割り見直し法案の取り扱いが与野党の間で結論が出ていません。抜本改革のことも含め共産党はどう訴えますか。
志位 「0増5減」というのは、1票の価値の平等という点でも、当座の取り繕いのびほう策で、同時に小選挙区制を固定化するものですから、私たちは容認するわけにはいきません。
私は、小選挙区制そのものをいま、問うべきだと思うのですね。小選挙区制が、大政党有利に民意をゆがめるという根本的欠陥をもつことは、この間、選挙をやって(第1党が)4割台の得票で7割、8割の議席を得るという結果に表れています。小選挙区制が、投票価値の平等とも相いれないということも事実が示しているわけです。
ですから、小選挙区制をなくす。そして総定数480で、11ブロックの比例代表制に抜本改革する。それから政党助成金は撤廃するというのが私たちの改革案です。
憲法
9条を守り生かすとともに、96条改定という「邪道」阻止で共同を
島田 その国会では、憲法改正をめぐる議論がかなり活発になっていますが、それに対する勢力というのも国民の間には大きくありますよね。こういった議論の大きな憲法問題、どのように対処していきますか?
志位 いまの自民党、維新の会、みんなの党などの改憲勢力の一番の狙いというのは、憲法9条を変えて、日本を海外で戦争する国に作り変えることにあると(思います)。私たちはこれにはきっぱり反対して、9条を守り、生かすという立場でがんばりたいと思っております。
ただ、改憲勢力は、改憲の「突破口」として憲法96条の改定を押し出してきました。すなわち、憲法発議の要件を(衆参両院議員の)「3分の2以上」から「過半数」に緩和すると(いうわけです)。これに対して、“これは邪道だよ”と言う声が、憲法9条への立場の違いを超えて、広い層からいま起こっているという点が非常に大事なところだと思うのです。
これは決して「形式論」ではありません。近代の立憲主義というのは、主権者である国民が、憲法によって権力を縛るというところからきているわけで、これを法律並みに変えやすくしてしまったら、憲法が憲法でなくなるわけで、こういう「邪道」には立場の違いを超えて反対を広げていきたいと思っています。
外交
TPP、米軍基地――こんなアメリカいいなりの政治でいいのか
島田 外交の問題についておうかがいしたいのですが。一つは、安倍内閣は日米同盟関係が基軸だと強調しています。この点についてどうでしょうか?
志位 それ(日米同盟基軸論)でやっていることはTPP推進という問題ですね。TPPについて、「守るべきものは守る」と言ってきたんだけれども、(アメリカとの)「事前協議」で農産物については保証はなしです。そして一方ではアメリカの要求は丸のみということですから、この道を行ったら本当に「亡国の道」になる。TPPには断固反対で頑張りたい。
それから基地の問題では、沖縄の基地問題、あれだけ県民のみなさんが島ぐるみで反対している(普天間基地の)辺野古への「移設」、オスプレイの配備、これをあくまでも頭越しにすすめようとする。これも“基地のない沖縄”“基地のない日本”という方向で、私たちは大いにたたかいを起こしていきたいと(思います)。
こんなアメリカいいなりの政治を続けておいていいのかも、問いかけていきたいと思っております。
歴史問題
アジアと心通う外交には過去の侵略戦争への反省が不可欠
島田 一方で、対アジア外交、これはどうご覧になっていますか?
志位 この間、安倍首相が「村山談話」の見直しに言及し、「侵略の定義は定まっていない」ということを言い出し、特に「村山談話」の一番の核心中の核心である、「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」をすすめたという、ここについては頑強に認めようとしない。これは大問題だと思うんですね。
一方、日本軍「慰安婦」問題について、(日本維新の会共同代表の)橋下(大阪)市長の(「慰安婦は必要だった」との)発言に対して、国連の委員会が日本政府に対して、この発言は事実を否定するものであるからこれを許すことはできないと、政府としてきちっと反論すべきだと勧告したのに対して、安倍首相は、橋下発言について「立場が違う」というだけで、この発言を批判するようなことは一切言おうとしない。これも大問題です。
私は、アジアのみなさんと本当に心が通う外交をやろうと思ったら、過去の侵略戦争や植民地支配に対する真剣な反省、そして必要な謝罪と補償をきちんとやっていくことが大事になってくるということを強く言いたいと思います。
参院選
“自共対決”――「国民が主人公」の新しい政治への転換訴えて
島田 参議院選挙が間近です。なにを柱に訴えますか?
志位 この間、「自民か、民主か」と、いわゆる「二大政党による政権選択」ということが言われたんですけれども、ずいぶん廃れたと思うのですよ。その次に今度は「第三極」というものを持ち上げる動きが出てきたけども、これも廃れつつあると(思います)。結局、自民党と同じ、その補完勢力ではないかということになってきた。
そういうなかで、自民党対共産党、“自共対決”というのが、いま浮かび上がりつつあると思うんですね。私たちは、大いに“自共対決”を訴えて、その中で自民党型の古い政治を切り替えて、「国民が主人公」の新しい日本をつくろうということを訴えて、大いに躍進を期したいと考えております。
島田 ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。