主張
国民運動と選挙
重要性増す政治を動かす行動
消費税増税反対や「原発ゼロ」、環太平洋連携協定(TPP)参加阻止など全国でおこった国民運動が、今回の総選挙結果に十分反映されなかったのではないかという議論がみられます。それは皮相な見方でしょう。むしろ今回の選挙は、国民運動の発展が政治を変える力になることを示したのが特徴だったといえます。
国民の声を恐れて
たとえば消費税増税問題は、民主党が前回の総選挙での公約を投げ捨てて、自民党、公明党との3党合意で2014年に8%、15年に10%に引き上げる法律を成立させたあとの、最初の国政選挙でもあり、本来、重大争点であるべきでした。メディアのどの世論調査でも増税反対が賛成を上回っていました。
しかし3党は、いっさい口を閉ざし、争点隠しに終始しました。いまの大不況下でこんな大増税をすれば、経済の底がぬけてしまう深刻な問題が論争であきらかになったら、実施を前にして国民の大反対運動を招く恐れがあるからにほかなりません。
原発問題では、推進が本音の自民党でさえ、原発反対の世論と高まる運動を恐れて、「最適な電源構成」を10年以内につくるなどと判断をうやむやにし、安倍晋三総裁は街頭で「原発に依存しない社会をつくる」と演説しました。関西電力大飯原発を再稼働し、電源開発大間原発の建設を再開した民主党の野田佳彦代表も「30年代に原発稼働をゼロにする」と矛盾だらけの主張を展開しました。こうした争点を先送りしたり、あいまいにして支持をとりこもうとした各党の姿勢のなかに、国民運動がいかに大きな影響を与えていたかがはっきり見えます。
TPP問題でも同様です。この間、全国でJAグループ、医師会はじめTPP参加に反対する大運動が広がりました。このため野田代表は、TPP推進にあたっては「守るべきものは守る」といい、安倍総裁も「『守るべきものは守っていく』という交渉はできる」などと、実際にはありえない主張をくりかえしました。
TPPへの参加は「例外なき関税ゼロ」を大原則にしており、これを受け入れるのが条件です。「守るべきものは守る」などという主張は通用しません。野田代表も安倍総裁もテレビの討論番組で賛否を問われて、結局、推進とはいえず、△マークを書いて逃げました。一方で自民党の当選者の多くがTPP参加断固阻止をかかげていました。参加反対の運動、共同の輪の広がりが論戦に反映されていたことはあきらかです。
新たな意気込みで
総選挙をうけて、国民運動の重要性はいっそう高まっています。近く発足する安倍・自公政権は、国会の多数議席を背景に、アメリカや財界の要求にこたえて、国民の利益に反する政治を強行しようとしています。国民とのあいだで激しい矛盾を引き起こします。
たたかいは新たな意気込みで始まっています。「原発いらない」と訴える首都圏反原発連合の毎週金曜日の首相官邸前抗議行動は、政権交代後も計画するなど、さらに大きな運動になろうとしています。TPP参加反対の運動も、活動を強化しています。「一点共闘」をはじめ各分野で運動の前進が強く期待されます。