主張

労働時間規制の破壊

「ただ働き」の国づくり許すな

 安倍晋三政権がめざす「企業が世界で一番活躍しやすい国」づくりで、財界からの注文がとくに強いのが労働時間の「規制改革」です。労働者に残業手当を払わずに何時間でも働かせることができる国になったら、財界にとって日本はまさに「世界で一番」です。そんな虫がいい財界の注文に本気でこたえようというのが安倍政権の「成長戦略」です。財界がめざすホワイトカラー層を対象にした企画業務型裁量労働制の見直し、さらには労働時間規制の適用除外制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)は絶対に許せません。

深夜・休日手当もなし

 経済同友会、経団連が先週、あいついで「成長戦略」にたいする財界の要求をまとめた見解をだしました。これだけは譲れないという財界の意思表示です。両者ともに労働時間規制の見直しは先送りできない課題としています。

 ホワイトカラー労働者の労働時間規制の緩和は、正社員雇用の破壊とともに財界がいまもっとも重視している要求です。裁量労働制は、仕事の方法を労働者の裁量にゆだねるとして、何時間働いてもあらかじめ労使が協定した時間だけ働いたとみなす制度です。協定が8時間だと、それ以上に働いても残業代を出さなくてもいい、企業に都合がいい制度です。

 ところが導入がなかなかすすみません。「企画、立案、調査及び分析」の業務を対象にした「企画業務型裁量労働制」は、規模が1000人以上の企業で導入率がわずか4・6%です。導入要件がきびしいために使えずにいるのです。そこで財界は、労使委員会で5分の4以上の決議、労働者本人の同意などの要件を撤廃し、さらに対象業務と労働者を拡大してホワイトカラー層全体に広げることをねらって、政府の「成長戦略」に押し込もうとしているのです。

 それだけではありません。裁量労働制はあくまでも労働時間の「みなし制度」であって、労働時間の適用除外ではありません。したがって深夜・休日労働の手当は出す必要があります。

 そこで次の手段としてねらっているのが「ホワイトカラー・エグゼンプション」です。営業、事務、研究開発の労働者について一定の要件をつけ、深夜・休日労働を含めて労働時間法制の適用を除外する制度をつくるものです。第1次安倍政権がめざして失敗した「残業代ゼロ法案」の再現です。

 財界がこの制度に執着しはじめたのは2001年で、ちょうどこの年の4月6日に厚生労働省が「サービス残業根絶」の通達(4・6通達)を出しました。企業の労働時間管理責任を明確にしたもので、トヨタなど大企業の多くが是正を余儀なくされました。この通達を敵視して巻き返しをねらったのが「ホワイトカラー・エグゼンプション」にほかなりません。

改悪阻止に力を合わせ

 日本の財界、大企業は、労働者が働いただけの賃金を払うという最低限のモラルをもっていません。サービス残業やらせ放題、長時間労働で過労死しても自己責任。まさに世界の異常です。労働者を労働時間の規制なしにしぼれるだけしぼろうという財界の危険なたくらみを絶対に許すことはできません。労働者、労働組合が組織の違いをこえて改悪阻止のために行動するときです。