トンネル天井板 民営化後 撤去ゼロ
中日本 旧公団は19本で実施
安全軽視 コスト削減
9人が死亡した中日本高速道路の中央自動車道上り線・笹子トンネルの天井板崩落事故で、旧道路公団が民営化する2005年までに中日本管内の笹子と同型のトンネル19本の天井板を撤去していたことが18日、本紙の取材でわかりました。民営化以降、中日本高速道路は天井板の撤去をいっさい実施しておらず、民営化による安全対策の遅れが事故につながった疑いがあります。
本紙の取材に中日本は、コンクリート製天井板を撤去したトンネル19本の名前を明らかにしました(表)。
東名道のほとんどと北陸道では1990年代に、中央道の4トンネルでは04年までに撤去を終えていました。多くが開通から25年ほどで撤去しています。
撤去の理由について、中日本は「換気施設の更新にあわせて、天井板が不要になったため撤去した」と説明しています。
現在、中日本管内で天井板を持つトンネルは、笹子(上下)と都夫良野(上下)の一部と中央道の恵那山の下り(75年開通、延長8・5キロ)の5本。
いずれも開通から35年以上経過したものですが、民営化した05年10月以降、撤去はすすんでいません。
民営化後、撤去が進んでいない理由について、中日本の道路管理に関わった関係者は「会社側には、『危ない』という認識があるはず。しかし、改良には工事費がかかり過ぎるのと作業が大変なので、距離が長い笹子はずっと先延ばしにされていると聞いた。民営化後、サービスエリアの充実など目に見えることばかり力を入れ、施設の管理・点検がひどいことになっていた」と指摘します。
中日本が、民営化直後の06年に発表した経営計画「チャレンジV」によると、保全などについて「02年度比3割コスト削減水準を維持しつつ、更なる削減をめざします」と明記。民営化のもとで安全軽視のコスト削減を進めていたことがわかります。